何がなんでも少数派の人権を踏みにじらずにはいられない議員、「杉田水脈」の稚拙な論理

杉田水脈議員

杉田水脈議員(時事通信社)

 こんにちわ。ドリーです。日本に蔓延る「似非保守」の作品を一冊づつ取り上げ、その身勝手な歴史認識、を紹介する、企画。今年も、冬が近づき、終わりが迫ってきましたが、皆さんは如何お過ごしですか。

「炎上の女王」杉田水脈

 前回、百田尚樹の歴史観を紹介して今回は第2回目。で、今回は、先日大炎上した「杉田水脈」を取り上げたいと思う。もはや説明は不要だろう。数多くの失言を連発し、保守の中の「炎上の女王」と崇められ、その確固たる地位を確立した杉田氏。しかしその本質はあまり触れられていない。  そこで今回、私が、杉田氏の著作を読み解き、彼女の考えの「真の恐ろしさ」に、迫って行きたい。杉田氏の「女性は嘘をつく」発言は多くの人に批判されたが、実は、杉田氏の攻撃対象は、以前は女性ではなくLGBTに向けられており、保守の中において、彼女は、昨今日本に蔓延するLGBTの排除の旗振り役として活躍してきた。  杉田氏はその自著『なぜ私は左翼と戦うのか』の中で子供達に若い時に「同性愛」を肯定的に教える学校に懸念を示し、学校で「性の多様性」を伝える教育に反対の立場を示す。 “LGBTの権利を主張する人は、権利があることを積極的に啓蒙するために教育の中に取り込もうと主張しています。” 〈『なぜ私は左翼と戦うのか』青林堂P137〉  そして杉田氏は、新潮のLGBT論文で、自ら性的少数者に対する誤った知識を披露し、大炎上した。その事は、今も、覚えているだろう。杉田氏の主張は、発表当時、衝撃的なインパクトがあり、私を含め誰もが驚いた。だが、あの寄稿の恐ろしさは実は「生産性」とはまた別のところにある、実は、あの寄稿には恐るべき狡猾な同性愛排除レトリックが潜んでいるのだ。

論理的に破綻している杉田LGBT論

 一つ一つ見て行こう。先ず杉田氏は、冒頭で、LGBTを肯定的に取り上げる報道が「行き過ぎ」だと主張し、朝日新聞を批判する。   “朝日新聞や毎日新聞といったリベラルなメディアは「LGBT」の権利を認め、彼らを支援する動きを報道することが好きなようですが、違和感を覚えざるをません。発行部数から言ったら、朝日新聞の影響の大きさは否めないでしょう。“『新潮45』2018年8月号。 ”朝日新聞が「LGBT」を報道する意味があるのでしょうか。むしろ冷静に批判してしかるべきではないかと思います。”『新潮45』2018年8月号。  そして後半部分。杉田は、同性愛者の苦しみは「親に理解されない事」が問題だと言い始め、表向きはLGBTに同情する素振りを見せる。 ”LGBTの当事者たちの方から聞いた話によれば、生きづらさという観点でいえば、社会的な差別云々よりも、自分たちの親が理解してくれないことのほうがつらいと言います。親は自分たちの子供が、自分たちと同じように結婚して、やがて子供をもうけてくれると信じています。だから、子供が同性愛者だと分かると、すごいショックを受ける“『新潮45』2018年8月号。  つまり杉田氏は「LGBTを差別しません」と言いながら同時に「LGBTを肯定的に語るのは行き過ぎだ」と主張する。この主張が、如何に矛盾しているか。誰がどう見ても分かるだろう。  杉田氏は、LGBTの「親の偏見」は良くないと言いながら同時に「LGBTの理解が促進されることを嫌がる」のである。  これは明らかに論理破綻している。冒頭で杉田氏は「親の無理解」を打破すべき課題だと位置づけた。が、後半で、彼女は、性の多様性を肯定的に報じるのは行き過ぎだと言うのだ。  繰り返すが、これは明らか矛盾だ。なぜなら性の多様性を肯定的に報じられることなしに、親の無理解を打破するのは、不可能だからだ。  確かに杉田氏の主張する「親の無理解」は、LGBTには切実な問題ではあるが、その無理解が生じる原因は、報道が「行き過ぎ」ではなく逆に「足りない」事の証左でしかない。が、杉田氏は過敏に報道の「行き過ぎ」に反応し、反対に「親の偏見」に晒されるLGBTに同情を示すという二つの矛盾した態度を取り、自ら論理破綻に陥る。杉田水脈、排外主義ワンダーランド、反知性ジェットコースターである。  まさにそういった杉田氏の性的少数者を「見えないもの」として扱ってきた欺瞞性こそ、LGBTが「親に理解」されないことの最大の原因ではないか。  杉田氏は、差別に反対するようなポーズを取りながら、その実、差別に加担している。何故なら「LGBTは隅に隠れて人目に付かない限り、認める」というのが、既に「差別」だからである。このように巧妙に差別レトリックを用いて杉田氏は、自分の理解の及ばない性的少数者の排除を正当化する。それこそが彼女の狡猾な差別レトリックなのである。
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