「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」(以下「休業支援金」)の申請に企業が協力してくれないというケースが続発している。
休業支援金は、企業から休業手当をもらうことができない労働者が国に申請することで、休業期間中の給与補償として、休業前賃金の8割を国から直接受け取ることができるという制度である。
休業支援金を申請する際には「支給要件確認書」を提出するが、ここには「事業主記入欄」がある。事業主記入欄では、労働者が休業支援金を申請している期間に「事業主が休業を命じたかどうか」などといった点について事業主の認識を記入するが、この事業主記入欄への記入を拒む、また記入をしても休業を認めないという企業が少なくない。筆者が事務局次長を務める首都圏青年ユニオンにはそうした企業で働く労働者たちから多数の相談が寄せられているのである。
これまで厚生労働省は「事業主が命じた休業である」ことを事業主が認めない場合の休業支援金支給決定は困難であるとしていた。しかし最近やや論調が変わっており、事業主が休業を認めないにもかかわらず支給決定がされるケースが出てきている。事業主が休業を認めないケースにおいても支給決定をするという運用を、広く行っていくことを厚生労働省や労働局には求めたい。
アルバイトの休業支援金受給を困難にする株式会社プラチナスタイル
首都圏青年ユニオンの交渉事例を紹介しよう。
株式会社プラチナスタイルは、結婚式の二次会や企業パーティの会場の貸し出し、ビュッフェの調理・給仕などを行う企業である。新型コロナウイルスの影響でパーティ・二次会の予約がなくなり、そこで働くアルバイトは2020年3月初頭から現在まで一切シフトに入れなくなった。
アルバイトらは休業手当も一切支払われなかったため、休業支援金申請のための協力を事業主に求めた。パーティや二次会の予約がなくなり企業が大きなダメージを受けていたことを認識していたアルバイトだったが、休業支援金ならば企業に迷惑をかけることはないため協力してもらえるだろうと思っていたという。しかし、同社は、「シフトが出ていない期間については休業支援金の対象にならない」との認識のもと、休業支援金申請への協力を拒否した。
その後アルバイトたちは首都圏青年ユニオンに加入し、改めて休業支援金申請への協力を求めた。その結果同社は、事業主記入欄への記入を行うことに同意しつつも、「事業主が命じて(…)休業させましたか」という項目について「いいえ」と回答しており、休業を認めないという立場を変えていない。
なお、同社は、9月14日に開催された首都圏青年ユニオンとの団体交渉では「2020年4月以降もシフトはなかったが、雇用契約は継続している」という認識を前提にしていたにもかかわらず、後日作成された事業主記入欄では、休業支援金の申請がされている期間(今回の申請は2020年4月から6月末までについて行った)に「申請を行う労働者を(…)雇用していましたか」という項目に「いいえ」と回答した。休業支援金が申請されている期間について、休業を認めないばかりでなく、雇用契約の存在そのものを否定したのである。
アルバイト側は、解雇や雇止めの通知は一切受けておらず、また日雇い契約だという説明も一切されていない。そもそも9月14日の時点では雇用契約が継続しているという認識だったのである。休業支援金は雇用契約がなければ受給できない。同社は、休業を認めないばかりか雇用契約の存在さえ否定することで、アルバイトの休業支援金受給を著しく困難にしているといえよう。