成功者に聞く、「40歳からの転職」がうまく行った人に共通するモノ

 コロナ禍により多くの企業や事業者が打撃を受け、同時に働き方も見直されるなか、転職を考え始める中年が増加しているという。そして中高年の転職市場そのものにもあらゆる要因でパラダイムシフトが起きており、従来とは違う方法が求められている。そこで、実際に転職に成功した人々を取材した。

前職での実績に驕ることなくチャレンジする姿勢が吉に

40歳からの転職

「美容業界の商習慣がわからないので苦労してますが、新たな挑戦が楽しい。6歳の娘と、いずれコスメなどについて話せれば」と話す

 44歳の厚野吾郎さん(仮名)は昨年、十数年勤めた大手ゲーム会社の役員から、まったく畑違いで、規模も前職の10分の1ほどの美容系会社の役員に転職した。ゲーム会社では長年にわたり業界トップの実績を打ち出してきた厚野さん。同じ役員のポストとはいえ、40代半ばにして未経験の業界に転職したきっかけは何だったのか。 「担当していたゲームシリーズはロングセラーでしたが、逆に成長も感じられなかった。加えて景気の低迷や企業と社員の思惑のズレがあり、部署も統廃合する時期だったんです。良くも悪くも自分の未来が見えてしまって」  年収は1100万円。贅沢な悩みにも聞こえるが……。 「ひとまず、転職サイトに登録しようと履歴書を書いていると、過去の自分が輝いていた時期は、やはり新しいことに挑戦していたときだと気づきました。すると、そのサイトを通じて今の会社から連絡が来たんです」  業種は違えど、厚野さんの「マネジメントスキル」が注目されたという。特に「BtoB」に関するスキルと経験は、フィールドは異なるが、存分に現職のジャンルにも生かせるということだった。 「面接の際、先方が僕を必要としていることを理路整然と説明してくれたんです。あと、偶然その役員は僕と同い年で、僕自身が前職で置かれた立場に似ていた。それに、『新しいことに挑戦したい』という意欲に満ちていた。そこが、意気投合したポイントですね。妻も賛成してくれました」  幸いにも、年収は前職と同額。前職の実績にアグラをかかず、相性の良い会社を判別できたことが勝因だろう。 40歳からの転職

40代で転職2回。直感による即決と雑務スキルが奏功

 40代で転職2回目となる柳沢悟さん(仮名・46歳)。前々職のアパレルから化粧品販売を経て現在はクラフトビール関連のベンチャーに勤務している。 「前職は主にお年寄りに対し、高額な化粧品を電話で売りつける仕事。もちろん合法の範囲内ですが、支店長として入社した私は、主にクレーム処理の担当でした」
40歳からの転職

前職の化粧品会社への転職は45歳で、25人のスタッフを統括。現在はクラフトビールの商品企画、設計、製造などを担当

 ストレスで仕事中に倒れ入院もしたが、子供が生まれたこともあり、何とか1年は続けたという。 「そんなある日、知人と街でばったり遭遇しまして。そこで、お互いの共通の知人が『国内のクラフトビールの流通増加に貢献できる新しいシステム』の事業を始めるようだと耳にしまして。それを聞いてピンときたんです」  翌日にはその知人に連絡をし、会社の立ち上げメンバーとなった。 「前々職で洋服の設計図や仕様書を書いていたのと、事務・総務・経理・営業と一通りこなしてきた経験がベンチャー立ち上げの雑務に向いているということで、買われました。今でもそれが、会社のロゴやパンフレットデザインと、企業への営業スキルに発揮されていると思います。年収は750万円から550万円にダウンしましたが今はほぼストレスフリーです」  現職に携わるにあたり、困難はなかったのだろうか? 「最初の1年はほぼ無給で無休。貯金を取り崩して生活をしていましたが、妻も前職でのストレスフルな状態を知っていたので応援してくれました」  知人経由という僥倖はあったものの、即決できたのが成功のカギだったといえる。40代以上の転職は、世間体よりも自分に正直であることが奏功する事例だろう。 40歳からの転職
次のページ
バー経営で培った接客スキルが重宝され転職後年収3倍に
1
2