畑野とまと氏
「
セックスワークは高度な接客業です」
セックスワーカーの活動団体SWASHメンバーの畑野とまと氏は言う。
「それなのに、イメージ先行で簡単に誰でもできる仕事だと思われている。
『仕事』としてやっているということを理解されていないのです」
新型コロナウイルスの感染が広がるなか、セックスワークを含む「夜の街」は感染拡大の要因としてバッシングを受けた。また、岡村隆史氏による「コロナが明けたら美人さんが風俗嬢やります」発言炎上から、社会活動家藤田孝典氏によるセックスワーク廃止論も出てきている。加えて、セックスワークにもコロナ給付金を支給するように求める訴訟も起きている。
そんな中で、
前回の記事ではセックスワーカー当事者にインタビューして、「セックスワーカーは社会の被害者だ」という言説に疑問符を投げかけた。今回はセックスワーカーの活動団体SWASHメンバーの畑野とまと氏に話を聞き、
よりよいセックスワークのために社会や法制度はどうあるべきか尋ねた。
――まず現在のセックスワーク法制について、どうお考えですか?
畑野とまと氏(以下、畑野):現在セックスワークを取り締まっているのは、売春防止法と風俗営業法です。
まず売春防止法は、売春を助長する行為等を処罰し、補導や保護更生などの措置によって売春の防止を図るものです。この法律でいうところの「売春」とは、女性器に男性器を挿入するいわゆる「本番行為」のみを指しています。デリバリーヘルスなどの性交類似行為や同性間の性交はこれには含まれません。
風俗営業法では、営業する各都道府県公安委員会に届出をするという届出制となっています。店舗型性風俗特殊営業と無店舗型性風俗特殊営業に分かれ、1号ソープランドをはじめ、各種の性風俗が列挙されています。
そのため、少なくとも
本番行為を伴わないセックスワークは違法行為でもグレーゾーンでもなく合法だということです。つまり、
きちんと国に認められている職業であるにも関わらず、売春防止法の印象によってまるで違法行為のように扱われてしまっているんです。
一方、本番行為を伴うセックスワークに関しても、違法とされていることによって、安全上の問題が起こっています。老舗ソープランド角海老グループの「亀有角えび店」が摘発された事件が最近起こりましたが、その背景にあったのは利用者による盗撮でした。違法とされているために、
ソープランドでは、盗撮のような安全上の問題が起こった時でも、警察を呼ぶことができないのです。
――セックスワーカーは雇用契約ではなく業務委託契約であるため労働者性が認められないことがあるという側面もあります。
畑野:これは、セックスワークだけの問題ではなく、そもそも日本の労働基準法の罰則が緩いということが指摘できます。また、職業マイノリティであるセックスワーカーに関しては、扱ってくれる弁護士も少なく、労働相談をするインフラが整っていないことも問題です。