出世につながる“空気づくり”。キーワードは「おおやけ・ばったり・おすみつき」 ――【本田哲也のパーソナル戦略PR術】
2015.02.06
戦略PRとは、「空気をつくって商品の売りにつなげる手法」です。前回は、「なぜ空気をつくることであなたという商品が売れるのか」をお話しました。さあ、ではいよいよ、具体的な「空気のつくりかた」にはいっていきましょう。今回は、戦略PRを成功させる「3つのキーワード」。まずはその「基本のキ」を紹介したいと思います。
1.「おおやけ」
2.「ばったり」
3.「おすみつき」
これが、3つのキーワードです。何かの呪文みたいですね。まずはひとつひとつ簡単に説明していきましょう。
「おおやけ」は、「公(おおやけ)」のこと。ちょっとコムズカシクなりますが、世論形成には、モノゴトの「公共性」なるものが重要です。それはみんなの問題なのか、みんなで共有する価値があるものかどうか、というポイント。ちなみに「おおやけ」を辞書(大辞林)でひくと、「個人ではなく、組織あるいは広く世間一般の人にかかわっていること」と出ます。
「ばったり」は、「昨日アイツに渋谷でばったり会ってさー」の「ばったり」。ふたたび大辞林によると、「偶然出会うさま」。この「偶然」ということがポイントなのです。企業が自然なかたちで空気を広めるには、消費者との接点にある種の「偶然性」を持たせる必要が出てくるのです。
最後に、「おすみつき」。これは、「お墨付き」と書けば分かるでしょう。またもや大辞林によると、「権力者や権威者の許可・承諾・保証など。また、その文書」と出てくる。要は、「あの人が薦めるんだから間違いないのだ!」という状態のこと。英語では「エンドースメント」とも言います。空気づくりには、「影響力のある第三者」の関与や推奨による「信頼性」の獲得、つまり「おすみつき」のゲットが重要な意味を持つのですね。
専門的に言いましょう。「空気」の形成プロセスに必要なのは、「公共性」、「偶然性」、「信頼性」の3つだということです。僕たち戦略PRのプロは、企画プランニングでも実施でも、常に頭にあるのはこの3つです。これらはすべて重要で、どれかが欠けても成功が遠のいてしまいます。
「おおやけ」から考えてみましょう。まず、企業が実施する戦略PRの場合はどうなるか。よく行われる方法が、商品と社会問題をリンクさせるというやり方です。例えば、おむつメーカーは、「赤ちゃんの睡眠問題」の空気づくりから、「快適な睡眠を提供するおむつ」へ注目させます。家電メーカーは、「夫婦円満の秘訣」の空気づくりから、「夫婦げんかを防ぐ食洗機」へと注目させます。睡眠や夫婦円満の話題は、おむつや食洗機よりも公共性が高い――つまり広く世の中の関心がある話なんですね。広い関心があるから、例えばマスコミは大きく報道します。ネットでも話題になります。「おおやけ」というポイントを付加することによって、話題がパワーアップして、かつ需要も換気されます。言い方を変えれば、「なぜその商品が必要なのか」という、「大義名分」が生まれるわけです。
これをあなたの出世に応用すると……もうおわかりですね。あなた自身に「おおやけ」を付加するということは、あなたの仕事や立場と、「みんなが広く関心のあること」をつなげることです。あなた自身がその仕事に固執して、「いかにオレはすごいか」を吹聴してはいけません。それは言ってみれば、「商品の宣伝行為」です。そうではなく、例えば、「あなたの仕事が求められる社会背景」を考えるのです。そこまでおおげさじゃなくとも、「業界内のトレンド」でもいいでしょう。とにかく、あなたやあなたの同僚や上司といった利害関係者を超えた話が重要なのです。
少し長くなってしまったので、今回はこのへんで。次回はこの「おおやけ」の話を、さらに掘り下げてみようと思います。
<文/本田哲也>
ほんだ・てつや/1970年生まれ。セガの海外事業部を経て、1999年フライシュマン・ヒラード日本法人に入社。2006年、グループ内起業でブルーカレント・ジャパンを設立し代表に就任。2009年に『新版 戦略PR』(アスキー新書)を上梓し、広告業界にPRブームを巻き起こす。国内外の大手メーカーなどを中心に、戦略PR自体はもちろん関連する講演などの実績も多数。近著に『最新 戦略PR 入門編』、『最新 戦略PR 実践編』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)、『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など
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