コロナ禍のスペイン。9万社が姿を消し、120万人が失業する可能性

スペイン・マドリードの雇用事務所

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Alexandre Rotenberg / Shutterstock.com

9万社が廃業か倒産の可能性浮上

 スペインでは企業の存在を示すバロメーターのひとつとして社会保障費を支払っているか否かを目安にしている。社会保障費が未納となった企業は廃業または倒産したとみなされている。  それを基にコロナのパンデミックによる3月から7月までの累計を追跡して行くとおよそ9万社が社会保障費の未納となっていることが判明した。7月の時点で社会保障費を収めている企業社数は140万3578社。この企業社数は2014年まで逆戻りした感じだ。  3月と4月の時点で14万2000社が未納となったが、5月、6月、7月と景気の回復が幾分見られるようになって、その中から5万5644社が社会保障費を払うようになった。ということで、およそ9万社が最終的に廃業または倒産したとみなされている。(参照:「Finanzas Digital」)

企業を支援しないスペイン政府

 観光産業に多く依存するスペイン経済は外国からの訪問者数の激減で今後も企業の廃業または倒産が懸念されている。6月に封鎖が解除されて観光産業の復活が期待された。が、ここに来て新規のコロナ感染者の急増でヨーロッパ各国は訪問するのに危険な国としてスペインがリストアップされた。ということで、今年下半期の観光業の復活の望みは完全に消滅した。  更に、問題はパンデミックによる政府の企業への支援が金額面から見て少ないということである。例えば、ドイツだと企業の復活に費やす支援額はGDPの60%に相当する金額になっている。同じ意味でフランス23%イタリア21%となっている。ところが、スペインは僅か11%という低い支援額でしかない。  例えば、スペインの企業側が政府に要望しているのは、社会保障費の支払いを一時据え置きにすることだ。それが毎月の固定費として企業や自営業者の負担となっている。  また、休業補償の政府による負担は9月まで約束されている。企業はそれを少なくとも今年末まで延長するように政府に要望している。この要望が叶えられない場合は、企業の倒産が軒並み増えるのは必至である。というのも、企業は売り上げと仕事量が激減しているにもかかわらず政府による休業補償がないと従業員の給与なども自社で負担せねばならなくなる。その場合、唯一存続するための道は従業員の解雇しかない。
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120万人が失業者になる可能性も
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