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開発者を締め出してきた Twitter API の歴史
Twitter が API のバージョン2を、7月にリリースした。APIとは、アプリケーション・プログラミング・インターフェースの略だ。プログラムやソフトウェアの機能やデータを、外部から呼び出すための手順やルールのことだ。Twitter API は、Web API と呼ばれるタイプの API になる。Web経由で問い合わせをおこない、その結果をWeb経由で受け取るというものだ。
Twitter API は、今回のバージョンアップで、バージョン2.0になる。TwitterのAPIには、大きく分けて、1.0、1.1、2.0と大きなバージョンの違いがある。Twitter が最初にAPIを公開したのは、2006年の9月である(参照:
Twitter blog)。Twitterがサービスを公開したのは2006年の3月なので、その半年後ということになる。次に1.1に移行したのは2012年の9月である(参照:
ITmedia NEWS)。そして、今回の2.0へのバージョンアップになる。
2006年の Twitter API 公開は、世界中の開発者に熱狂的に受け入れられた。そして、多くの開発者を巻き込んで、コミュニティを形成して Twitter の普及に役立った。対して、2012年の1.1への移行は、多くの開発者の失望と怒りを招いた。このあいだに何があったのか、当時のインターネット社会の背景とともに、Twitter が API を通して、どのように開発者コミュニティと接してきたのか、たどってみよう。
「Web2.0」時代と共に訪れたWeb APIの隆盛
Web2.0という言葉がある。2005年頃から普及した言葉で、2000年代後半を席巻した。広めたのはコンピュータ関連の書籍で有名な企業オライリー・メディア社の創業者で社長の
ティム・オライリーである(参照:
コトバンク、
O’Reilly Media)。
1つの現象というよりは、Webが普及してきた結果起きた相転移だったと言える。従来は、情報の送り手と受け手が厳然と存在していたのに対して、Webが一般的になった結果、多くの人が送り手であり受け手となった。Web2.0という言葉は、
誰もが情報発信者になる時代の到来として用いられることが多かった。
その流れの1つとして、プログラマーの間では
Web API が流行した。多くの企業がこぞって、自社サービスを外部の人間が利用できるように Web API を公開した。そして、世界中の開発者が、それらを利用して新しいサービスを開発した。
マッシュアップと呼ばれる手法も多く見られた。複数の Web API を利用して、新しい価値観を産み出す手法だ。たとえば、地図情報の Web API と、グルメ情報の Web API を利用して、自分がいる周囲のグルメ情報を表示する。今では当たり前になっている表現は、この時代に大量に現れて実験された。
Web2.0 流行下での、Web API の隆盛は熱病のようだった。多くの企業が、自社のサービスを利用した Web API を、無償で公開した。この大波に乗り遅れるなとばかりに、小さな企業までが、こぞって Web API を提供した。
無償だから当然儲からない。それどころか計算リソースや通信リソースを消費するので費用が掛かる。それでも宣伝費と割り切って、大量の企業が Web API を公開してユーザー獲得競争に乗り出していた。