子ども向けとは思えない…何がサンリオのビジネスモデルを変えたのか?

 ハローキティやマイメロディ、リトルツインスターズ(通称:キキ&ララ)など、サンリオは子どもに夢を与えるようなキャラクタービジネスを1962年から展開してきた。近年ではハローキティがアメリカの伝説的ハードロックバンド「KISS」とコラボしたり、サンリオキャラクターの「クロミ」が「男心を操るための小悪魔ワザ」を紹介するという書籍「クロミちゃんの恋愛小悪魔ノート」を発売したりと、ファンタジックな世界観にはそぐわないようなコラボも行うようになっている。  2014年7~9月にテーマパーク「サンリオピューロランド」が展開したPR企画、「ピューロのうわさ100」もキャラクターの意外な姿が大きく注目を浴びた。企画内容は、一般的に知られていない同施設の情報を100個、動画共有サ―ビス「Vine」を使ってネット上で紹介するもの。動画ではクロミちゃんをモチーフにしたカレーをマイメロディがスプーンでぐしゃぐしゃにしたり、ポムポムプリンのお尻の穴にカメラを寄せたりと、サンリオキャラクターの子ども向けとは思えない姿が次々と披露された。
ピューロのうわさ6「かわいすぎて、食べづらいカレーがあるらしい。」

ピューロのうわさ6「かわいすぎて、食べづらいカレーがあるらしい。」より

⇒【動画】ピューロのうわさ6「かわいすぎて、食べづらいカレーがあるらしい。」 http://vine.co/v/MP10I2T7OM0/embed 「子どもに夢を与える」キャラクターにしては過激な演出の数々。サンリオではどのような方針のもとキャラクタービジネスが展開されているのだろうか。「ピューロのうわさ100」に携わった、サンリオエンターテイメントの宣伝部宣伝課・真鍋和弘氏は次のように話す。 「サンリオのキャラクターが『子ども向け』というイメージのままですと、過激と思われるのも仕方ないかもしれません。サンリオでは1990年代半ばに訪れた『キティブーム』を機に、キャラクタービジネスのターゲット層を大人まで入れています。サンリオピューロランドでも今、子ども向けというイメージを払拭しようと10代後半~20代の若い人に足を運んでもらえるようあらゆる戦略を展開しているんです」(真鍋)  真鍋氏によると、1996年のアトランタオリンピックをきっかけにハローキティは海外へ広く知れわたり、世界各国の大人の間でもブームになったという。それが逆輸入という形で日本にも流れ込んだ。華原朋美さんなど有名人がファンを公言し、キティグッズが女子高生の間で大流行。1999年に営業利益は当時過去最高となる188億円を記録した。  ところがキティブームが去ると物販事業が振るわず2007年に営業利益は62億円にまで落ち込む。そこで2008年に鳩山玲人氏(現・常務取締役)が入社し、「オープンイノベーション」精神のライセンス事業を海外を中心に展開した。企業のイメージに合わせてデザインがある程度変更できるという、自由度の高い条件でキャラクターのライセンスを貸し出し、使用料で利益を狙う事業だ。  KISSとのコラボではキティが舌を出し、富国生命保険のテレビCMでは「OLキティ」としてレディーススーツ姿に変身。それぞれの企画を最大限に活かすため、キャラクターの従来のルールの変更をいとわないコラボが数々とつくられて行った。営業利益は2013年に201億円とV字回復を遂げ、2014年には210億円と成長を続けている。  このようにサンリオのキャラクタービジネスの対象はここ20年で大きく変容を遂げた。キティブームによって子どものみならず10代後半から40代まで、国内だけでなく海外へも広がった。さらにラインセンス事業によって提携先のイメージに寄り添う機会が増えた今、もはや「子どもに夢を与える」枠にはとどまらない、キャラクターの多様な姿を見かけるようになった。 <取材・文/黒木貴啓