日本でも起こっているキリスト者の性犯罪<映画『グレース・オブ・ゴッド』は対岸の火事ではない 第2回>

聖神中央教会

2005年に牧師が信者の少女に暴行したとして逮捕された宗教法人「聖神中央教会」
(写真/時事通信社)

 前回は、日本における宗教者による性犯罪のうち大多数を占める仏教者によるものについて検証してみた。今回は大反響を呼んでいる映画『グレース・オブ・ゴッド』で描かれたキリスト教について検証してみる。

日本ではカトリック以外での性犯罪も

 日本ではキリスト教関係者の性犯罪は圧倒的少数派。キリスト者が容疑者として報じられた事件も他に比べて少なく7件のみ。しかしうち6件(85.7%)がインドア事件(*宗教内での事件を指す筆者による造語。本連載では宗教と無関係の信仰活動外での性犯罪を「アウトドア事件」と指す)だ(残る1件はドラッグストアのトイレでの盗撮事件)。母数が少ないので他との比較が難しいとは言え、インドア事件の割合は「祈祷・占い」とほぼ同レベル。  キリスト者のインドア事件6件のうち、容疑者が「神父」(カトリック)だった事件は2件「牧師」(プロテスタント系)が4件だ。カトリックだけの問題ではないことは明らかだろう。  前出の通り『宗教年鑑』ではキリスト教系の教師は約3万人とされており、仏教系の教師は約35万人。教師数に対する性犯罪容疑者数の比率を算出すると、キリスト教は0.023%で、仏教のそれは0.014%であるため、2倍近い。インドア性犯罪だけに絞ると、キリスト教は0.02%、仏教は0.0017%。キリスト教は仏教の10倍以上だ。  これまた、キリスト者が容疑者となった事件の数が少ないため割合を比較するのは難があるものの、ずいぶんと大きな差が出ている。  神道では、教師数に対する性犯罪容疑者の比率は0.011%。インドア犯罪に絞ると0.003%。キリスト教には遠く及ばない。祈祷師・占い師は『宗教年鑑』には載っていないので算出できない。

宗教者の性犯罪を象徴する2つの大事件

 キリスト者が容疑者となった事件のうち、大きく繰り返し報道されたのが、2005年に主管牧師・金保が逮捕された聖神中央教会(京都府)の事件だ。長年にわたり未成年者も含めた多数の信徒をレイプしてきた金牧師は、うち7人(うち5人が未成年者)に対する強姦罪で懲役20年が確定した。犯行も隠蔽も組織的に行われていた。  聖神中央教会はプロテスタント系だが、未成年者に対するインドア事件である点で、『グレース・オブ・ゴッド』『スポットライト』で取り上げられた事件と全く同じ。被害の深刻さや被害者の多さも同様だ。  摂理(キリスト教福音宣教会)は日本では刑事事件化していない(今回の統計ではカウントしていない)ものの、教祖・鄭明析(チョン・ミョンソク)は信者へのレイプについて韓国で有罪判決を受け服役した(すでに出所)。日本人信者も被害にあっていたことや、摂理が日本の大学で正体を隠して学生を勧誘していた(いまもしている)ことなどから、日本でも新聞、テレビで大きく報道された。これが2006年のことだ。被害者の中には未成年者もいたと言われている。  キリスト教系以外も含めた性犯罪の報道件数(多くは逮捕や送検時の報道)を年別に見ると、聖神中央教会事件や摂理問題がメディアで大きく取り上げる直前の2004年から、報道件数が増えている。
宗教者が容疑者となった性犯罪の報道件数(藤倉調べ)

宗教者が容疑者となった性犯罪の報道件数(藤倉調べ)

 以前に比べて宗教者による性犯罪を警察が発表するようになったか、新聞が報道するようになったのか、原因はわからない。報道の増加が2004年からなので、2つのキリスト教系(新)宗教をめぐる2005年と2006年の事件が原因ではないだろう。しかしこうした歴史の流れ上、2つのキリスト教系の事件は日本における宗教者の宗教的性犯罪を象徴する大事件という印象を受ける。
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「インドア事件」はキリスト教特有!?
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