保育士に十分な給与を払い、子どもにきめ細かな保育と教育を施す。認可外保育園設立に向けた挑戦

保育園 「私には保育園の経営経験はありません。しかし異業種からの挑戦だからこそ、できることがあると思っています」ーー。こう話すのは、福岡市でIT企業、イーストシステムソリューションズを経営する東奨一さんだ。3人のパパである東さんは育児を機に保育現場で保育士たちが直面する課題を知り、理想の保育園を作ることを決意。  保育園の予定建設地は、一大商圏である天神から地下鉄七隈線で約10分の場所にある高級住宅地「桜坂駅」目の前。定員は2歳以上の幼児10人で、保育士に十分な給与を出し、ワンストップで質の高い教育カリキュラムも備える。資金確保を目的として、7月15日よりクラウドファンディングを実施している。  保育業界は責任の重さに比して大きな利益を生まない。IT業界に長く従事してきた東さんが保育園経営にチャレンジした背景や、今後の展望について伺った。

保育業務の多くがアナログ。「これはまずい」

東奨一さん

東奨一さんと家族

 保育園の現状に疑問を抱き始めたのは、お子さんを自宅近くにある認可外保育園に預け始めた2年前のこと。保育に関わる業務の多くがアナログで処理されていたことに強い驚きを感じた。 「育児に関わる施設には国の補助や助成があり、ある程度のシステムが当然入っているものだと思い込んでいました。例えば監視カメラは当然設置されていると思っていたんです。教育施設での虐待や性加害がしばしば取りざたされますからね。  それから、業務の多くが人力で行われていたことにも驚きました。職業柄でしょうね、瞬間的に『これはまずい』と感じました」  厚生労働省は助成金を出し、保育業務のICT化を進めている。しかし現場で長く働く保育士の中には業務の効率化に抵抗を示す人もおり、システム導入が進まないケースが目立つ。現在でも手書きの連絡帳やイベント毎に制作物を作るなどの習慣が残っている保育園があり、保育士の負担を増している。  例えば、連絡帳が手書きの場合、保育士は連絡帳を保護者がお迎えに来る時間までに書き終える必要があるため、園児の昼寝中に書くケースもある。これでは保育士がまともな休憩を取れない。

園長「システム導入は難しい、費用がないから無理」

 だが東さんは当初、「システム化がされていないのは自分の子どもを預けている保育園だけだ」と思っていた。しかし他の保護者にヒアリングしたところ、どの保育園も似た状況にあったことに愕然としてしまう。子どもが通っている園の保育士にアナログ対応を続ける理由を質問したところ、「園長がそういうのが苦手でわからない。難しそうだし、そもそも費用がない」と返された。  東さんがお子さんを預けていた保育園では、全ての業務と問題解決はリーダ的な保育士さんが現場で考え実施している状況だったという。加えて業務の負担の割に報酬が少なく、月の給与手取りで14万円ほど。保育士たちが園長に改善を求めても、認められなかったという。  この状況に新型コロナウイルスが追い打ちをかけた。緊急事態宣言の発令に伴い休園となり、自宅待機となったパート保育士の収入は激減。家賃を払えないと訴える人もいた。  もはや保育士だけの力で状況を変えるのは無理だと東さんは悟り、「そもそも経営者と認可外保育の仕組みが変わらなければこれ以上どうにもならないと」との気持ちから、自分が保育園を作ることを決意した。
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きめ細やかな保育体制や教育カリキュラムを充実
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