なぜ人気家計簿アプリはUI変更を撤回したのか? モバイルファーストの結果生じるPCユーザーとの「齟齬」

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William Iven via Pixabay

人気家計簿アプリ「マネーフォワードME」、 UI変更を撤回

 7月7日に、家計簿アプリ「マネーフォワード ME」が、Web版をリニューアルしたあと不評を受け、前のバージョンに差し戻すことになった。  マネーフォワード側の目論見と、ユーザー側の求める内容にズレがあったのが原因だ。1年前の同社のデザイナーの記事によると、大量の機能により複雑化したUIをシンプルにしたいという思惑があったようだ(参照:池内健一)。公開後、ユーザーの意見として、大幅なデザイン変更や一部の機能削減が問題視されたと、同社の社長は綴っている(参照:Yosuke Tsuji)。ユーザーの意見を受け、Web版のバージョンが戻ったことに私は驚いた。目論見があり時間をかけて開発してきた製品を捨てることになるからだ。  こうしたトラブルに見舞われたが、マネーフォワード ME 自体は好調のようだ。新型コロナウイルス需要で、利用者数が1050万人を突破(自社調べ)したというプレスリリースを7月15日に出している。また同社については7月16日付けで「上場来高値 赤字縮小で反転期待」(日経新聞)というニュースが掲載されている。

PCユーザーとモバイルユーザーが求める画面の違い

 さて、今回の騒動を見て、PCユーザーとモバイルユーザーが求める画面の違いについて思うところがあった。以下、利用者の意見を取り上げてみる。  不評だった理由には、機能の削減もあるが、UIの大きな変更という要素も大きい。SNSなどで見かけたユーザーの意見を箇条書きにしてまとめてみる。 * 一覧性に優れたUIが、余白だらけになった。 * 一画面で表示できる情報の量が減った。 * パソコン画面はそもそも横長なのに、縦長のスマホ用サイト準拠になった。 * 同一画面で出来た操作に、画面遷移が必要になった。  これらは、最近のWebサイトのリニューアルで度々見かける。モバイルでの見た目を中心に作った結果、パソコンで使い難くなったというものだ。  最近の Twitter でのアップデートでも、似たような使い難さが発生していた。モバイル中心で作っているために、画面の上部に大きなUIがあり、横長のパソコン画面では、表示できるツイートが制限されていた。また、無駄な画面遷移が多く、使い勝手を低下させていた。しかたなく筆者は、Twitterの新UIを強制変更するChromeの拡張機能を自分で書いて適用した(参照:GitHub)。  このように、モバイル優先でパソコンユーザーが切り捨てられる現象が発生している背景を、IT業界の流れを通して見ていこう。
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モバイルファーストによるPCユーザーへのしわ寄せ
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