共通テスト、2つの日程設定で戸惑う受験生。公平性に疑問も

大学入試センターは3つの日程を用意

共通テスト 来年の大学受験生、特に現高校3年生はこれまで「役人」「有識者を名乗る人」達によって散々振り回されてきました。これらは、すぐにわかる重要事項の不備を発見できずに決定したことによります。  まず、来年の1月から実施される大学入学共通テストについて一通りの現状を整理しておきましょう。以下の内容は、6月30日に大学入試センターから発表された「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施要項」を元に整理したものです。 第1日程(1月16日、17日実施) 高校3年生および高卒の受験生が受けることができます。 第2日程(1月30日、31日実施) 高校3年生で「学業の遅れ」が理由でそれを学校長が認めた人に限り受験ができます。高卒の受験生は最初からは第2日程を申し込めません。なお、第2日程は第1日程を申し込んでおいたものの、病気等の理由で受験できなかった人の「追試」の役割もあります。 第3日程(2月13日、14日実施) 第1日程、第2日程のいずれかを受験予定であったが、病気等の理由で受験できなかった人のための「追試」です。「特例追試」と呼びます。第3日程の試験問題は、現行課程に変わるときに作成した予備の問題をもとに出題される予定です。 (ただし、「第1日程」のような呼び方は発表された実施要項にはありません。)  これまで通りであれば、第1日程の1月16日、17日に本試が設定され、その1週間後の1月23日、24日に追試が設定されますが、新型コロナウィルスの影響による「学業の遅れ」に配慮してこのような日程になりました。ところが、この「よかれ」と考えた配慮が逆に受験生を混乱させることになります。

第2日程の設定は意味があるのか

 文科省では、これまでに6月19日にも同様の令和3年度の入試に関する通知が出ていますが、ここには第2日程は、「学業の遅れ」を理由に選択できるとあります。しかし、その後、学校長の承認を必要とするなど第2日程の受験資格のハードルを上げてきました。「学業の遅れ」に配慮して選択肢を増やしたものの、第2日程にまわってほしくないという考えが透けて見え、「本当に『学業の遅れ』がある場合だけだよ」と念を押したように見えます。  さて、この「学業の遅れ」対策のための第2日程ですが、本当に必要だったのでしょうか。まず、「学業の遅れ」のためにどれだけ効果があるのかが疑問です。  その一つは、共通テストで「学業の遅れ」を救ってくれたとしても国立大学の個別学力試験(2次試験、以下2 次試験と記す)の日程は変わらないからです。結局は例年通り2月25日、26日に2次試験は実施される見込みで、国立大学を受験する高校3年生はこの日までに高校の学習内容を終えないといけないからです。(私立大学受験の場合も同様です。)  加えて、数学の場合は、国立大学を受ける多くの高校3年生は高校2年生までに共通テストの出題範囲は終えており、共通テストを2週間遅らせてもその効果は小さいと言えます。(もちろん、高校3年生のときに「数学B」(2単位)を学習するケースもあります。)  では、国立大学の個別学力試験および私立大学の入試も今から実施日を延期したり、出題範囲を縮小したり、今から選択問題を増やしたりすればよいではないかと考える人もいるかもしれませんが、それは簡単なことではありません。それは、会場確保の問題と人的な問題があります。  まず、今の段階から、すべての国立大学が一斉に全受験生を収容できる会場を探すことは困難です。そして、変更した日程に試験を採点するかなりの人数の大学教員を今から確保できるかが大きな問題です。大学教員は、そもそも忙しい中、入試の採点日には予定を入れないようにしているので、毎年、採点日に集まることが可能なのです。  また、出題範囲の変更や選択問題を機械的に増やすことは不可能ではないかもしれませんが、問題の質の確保となるとかなり厳しい教科もあるのです。特に、選択問題は(すでに実施している大学もありますが) 公平性には疑問をもちます。(今後、学生募集に苦労する一部の大学が、「出題範囲を狭くするからうちの大学を受けてね」とアピールすることは考えられます。)  なお、受験者は少ないでしょうが、第3日程(特例入試)では大学入試センター試験(以下、センター試験)の予備の問題を使うようです。従来は課程の変わり目に用意するもののようなので、2013年~2015年ころに作成した問題です。今度の共通テストでは、試験の形式が大きく変わったのにも関わらず「課程の変わり目でないから用意しなかった」という話も聞こえてきますが、もしもこれが事実ならば大学入試センターの怠慢です。結局、第3日程の問題は、問う内容もかなり違いますから第1日程、第2日程の問題との比較はさらに困難です。
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必ず第1日程と第2日程の難易の差ができてしまう
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