島根県浜田市・料亭特選!ボイルずわい蟹としゃぶしゃぶセット 寄付金額4万7000円
水揚げ後、船上で生きたままボイルして急速冷凍しているため、鮮度は抜群。推定還元率も50%を超える
実質2000円の負担で、各自治体が用意する返礼品をもらえるふるさと納税。納税者に優しく、また地方創生という観点からも注目の制度だが、コロナの煽りを受けて異変が起きている。高額返礼品が生まれる背景に迫った。
コロナ禍でも得できて地方を支えられる「ふるさと納税」の裏ワザ
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、地方の財源不足は過去最大だったリーマンショック後の18兆円を上回る可能性がある。そのため、政府は返済期間の短い1年債や特例債を設けるなど、自治体が資金調達しやすいよう制度の弾力化を決めた。
一方、地方自治体の財源といえば、ふるさと納税が挙げられる。昨年、総務省の指導により「返礼品の還元率は寄付額の30%以内に収める」ことが徹底されたはずだったのだが、ここにきて還元率30%どころか100%近いものも登場。自治体間の熱い競争が始まっているのだ。
ふるさと納税に詳しいFPの丸山晴美氏が、その内幕を語る。
「コロナの影響で外食の利用率が低下し、一般消費が激減。それだけでなく、宿泊客の減少やインバウンドの衰退、お花見やGWといった大型イベントの中止などで需給のバランスが崩れ、供給過多に陥りました。第二波、第三波の可能性も否定できないことから、先行き不透明という不安もあります。とはいえ現場では、喫緊の問題として“すでに作ってしまったモノ”が廃棄を待つだけとなってしまっている現状もあった。そこで、各自治体はふるさと納税をその受け皿として活用すべく、『緊急支援品』と称してキャンペーンを開始したんです」
実質的に行われているのは、値引きや増量だった。たとえば日本一の寄付金を集める宮崎県都城市は、6月限りと銘打ってキャンペーンを展開。還元率95%の牛肉などを出品しており、注目を集めている。
「いわゆる“還元率3割規制”もなんのその。一時は下火となったふるさと納税ブームですが、ここにきてお得に利用できるチャンスが再来したといえ、盛り上がっています」(丸山氏)
確かに、緊急支援品のなかには還元率3割をはるかに上回るお得な返礼品がたくさんあった。やはり狙い目は、「ふるさと納税の三種の神器」と言われる「肉」「米」「カニ」あたりだろうか。
なかでも破格だったのが、佐賀県伊万里市の「コロナ被害を消費で支援 伊萬里牛ロースブロック1㎏」。寄付金額は4万円で、通常、伊万里牛のロース肉を精肉店で買うと100gで4000円ほど。すなわち、想定還元率は約100%にもなる。
佐賀県伊万里市・伊萬里牛ロースブロック1kg 寄付金額 4万円
仔牛から育て上げた極上の伊万里牛ロースがブロックで届く返礼品。1㎏が4万円とは破格の価格設定だ
有名ブランド牛である伊万里牛が、なぜこんなによい条件でふるさと納税の返礼品として出品されているのか。伊万里牛の流通を手がける、まつお食肉卸(株)の担当者が話す。
「佐賀県でもコロナの被害は甚大でした。ここ数か月でお肉がほとんど売れない状況が続いたのです。しかも、今残っているのは仔牛の値段が高かったときのお肉なので、今の相場で頑張ったところで正直まったく採算は合いません。ならば、伊万里牛の素晴らしさを皆さんに知ってもらうよい機会だと割り切って、提供することにしたんです」
その他にも、兵庫県洲本市の「淡路牛 肩ローススライス500g」が相場の半額以下で提供。お米では、北海道東川町の「東川米ななつぼし」が、寄付金(1万円)はそのままで従来の8kgより2㎏増量している。
今回の緊急支援品で特筆すべき点は、なにも値引きや増量だけではない。普段はラインナップされないレアなご当地食材を手に入れられることにもある。
岩手県西和賀町では老舗和菓子店「団平」の桜餅を特別に提供。地域創生を担当する祭り法人射的代表の種岡桂子氏は話す。
「私は、ふるさと納税を通じた西和賀町の町おこしを自治体から委託されているのですが、『お花見を想定して作っていた桜餅5000個の行き場がなくなった』という話を聞き、急きょ返礼品としてポータルサイトに掲載しました。すると、物珍しさもあってか2か月ですでに2000個は動いています。本当にありがたい」
沖縄県宮古島市宮古島産完熟マンゴー(1㎏) 寄付金額 1万9000円
宮古島で育ったみずみずしい完熟マンゴーが通常の贈答用と比べて3分の2の値段で手に入れられる
このように、ふるさと納税が行き場を失った特産品の受け皿として機能しているのは有意義なことだ。ただし、今回のふるさと納税にも注意点はある。丸山氏はこう喚起する。
「ふるさと納税が盛り上がれば地方復興への大きな手助けになるにもかかわらず、政府があまり大々的にPRしていないというのは少々違和感があります。おそらく、昨年規制をした手前、やむを得ないとはいえ還元率の大きすぎる返礼品がすでに出回ってしまっていることに起因しているのでしょう。地方の財政状況だけを見れば、このブームは来年以降も続くかもしれませんが、政府は一時的に暗黙の了解としているだけ、という可能性も高い。高知県奈半利町ではふるさと納税を巡り汚職事件も起きてしまい、またいつ規制が入るかわからない。この波にきちんと乗れる準備はしたほうがいいでしょう。コロナで収入が不安定になり、控除額が見えないという人もいるかもしれませんが、1万円くらいの誤差なら許容範囲だと思ってどんどん申し込みましょう」
コロナの影響によって思いがけず特需となったふるさと納税。本来の意義通り、ふるさとへの応援も兼ねてお得に使い倒そう。