「黒川杯」を阻止する身分すら明かさぬ警察官の制服を着た人物
新型コロナウイルス対策としての「自粛」に従っていない(とみなした)人物や店舗などに嫌がらせなどをする行為が「
自粛警察」と呼ばれ、メディアなどにも取り上げられる。しかしこれらは「
自粛自警団」と呼ぶのがふさわしいのではないだろうか。なぜなら、
「お願い」するとの名目で市民に向けて強制力や暴力を行使することをお家芸とする「本物の自粛警察」が、この日本にはもともと存在しているからだ。
先日、本誌で〈
検察庁前で”賭け麻雀”!?「黒川杯」があぶり出した警察の横暴〉という記事を書いた。ここでリポートした警察の対応は、法的根拠どころか身分すら示さずに「やめてください」という「お願い」。それでいて実力行使で麻雀を妨害するというものだった。取材中のジャーナリストに対してまで、押したり「撮影を止めて下さい」などと「お願い」をしたりしてきた。
身分を明かす「筋合いはない」などと言い放った警官が、自ら参加者たちにつきまとい身体が触れるような距離で歩いておきながら「
ぶつかったら公妨(公務執行妨害)で逮捕だからな」と脅してきた。
参加者を押し倒すなどの暴力も行われた。
主催者・取材者を含めてもたかだか20人程度の麻雀大会に、
拳銃で武装した集団が約60人も押しかけて、
暴力を用いて「自粛のお願い」をしたのである。
同じ日の同時刻。渋谷では、
警官によるクルド人への暴行に抗議するデモが行われた。報道などを総合すると、渋谷区内で自動車を運転中だったパトカーに停止を求められたクルド人男性が、警官から車の中を調べさせて欲しいと言われたものの拒否。
警官に首を押さえつけられたり地面に引き倒されたりして、けがをしたという。結局、男性は逮捕もされず解放された。
警察側にも言い分はあるのだろうが、怪我をするほどの暴力もやむを得ずと思えるような情報は今のところ出てきていない。
被害者がクルド人男性であったことから、
警官によるヘイトクライムとして批判され、渋谷での抗議デモにつながった。
この事件については、参議院議員の有田芳生氏がツイッターで「警察庁に映像前後の事実確認を行いました」と称して警察の言い分だけを拡散し、さもクルド人側に非があるかのように騒ぎ立てる人々をアシストしているかのような結果になっている(参照:
有田芳生氏のTwitter)。
有田氏は「
警視庁渋谷署警察官によるクルド人職務質問(5月22日)問題」と書いており、報道でもクルド人男性が警察から車内を調べさせるよう求められたとされている。どうやら「
職務質問」だったようだ。
警察官職務執行法は第2条で職務質問について定めており、同条3項には「
刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。」とある。職務質問は、警官による単なる「
お願い」にすぎない。本来、答えることを強要されることわれも、身柄を拘束されるいわれもない。
有田氏がTwitterに流している情報によると、警察側は、クルド人男性らが逃げようとしたと主張しているようだ。しかし仮に
職務質問なのであれば、答えることを強要できないのだから、逃げて何が悪い。ましてや、
けがをするほどの暴行を加える法的根拠がどこにあるというのか。
警察の言い分のみを一方的に垂れ流す有田氏もどうかしているが、有田氏が流した
警察の言い訳はそもそも暴行を正当化する理由になっていない。