新型コロナの感染拡大、経済活動の再開は時期尚早? アメリカでは慎重派が多数
米国では2020年3月から、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために、各州でそれぞれ外出禁止令を出しました。そのため、多くの企業が労働者を解雇し、米労働統計局によると4月に2050万人もの米国人が失業しました。この規模とスピードの不況は前例がなく、第2次世界大戦以降のいかなる不況より著しく悪い状況です。(参照:FRB)
そのような状況で、各州知事には、経済を再開するために、計り知れないほどの政治的・社会的圧力がかかっています。ホワイトハウスは、州が経済を再開するためのガイドラインとして、14日間にわたって感染者の「下向きの軌跡」を確認することを推奨していますが、多くの州は確認前に経済を再開しました。そして、5月20日までに、全米50州とコロンビア特別区(ワシントンD.C.)で、何らかの形で経済活動が再開されました。(参照:ホワイトハウス、CDC)
米国では、外出禁止令が始まる前、新型コロナウイルスの「超拡散イベント」と呼ばれるケースがありました。例えば、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の報告によると、2月と3月にシカゴで夕食会、葬式、誕生日パーティーに参加した男性が、おそらく知らずに少なくとも15人に感染を広げ、そのうち3人が亡くなりました。また、2020年2月末、ボストンで開催されたバイオテクノロジー企業バイオジェンの会議に出席した175人の参加者のうち、100人以上がウイルスに感染しました。(参照:「Boston Herald」)
外出禁止令が出た後も、一部では新型コロナウイルスの感染が広がっていました。5月8日のCDCの報告によると、米国内115の食肉や家禽肉製品の製造施設において、19州から新型コロナウイルス感染者の報告がありました。これらの施設の約13万人の労働者のうち、4913人がウイルスに感染し、そのうち20人が亡くなりました。
また、5月18日、米自動車大手フォード・モーターは、約2ヶ月ぶりに事業を再開するも、わずか数日後、2ヶ所の工場で従業員が新型コロナウイルスに陽性反応を示しました。工場は徹底的に洗浄と消毒をするために再閉鎖しました。このケースは、感染防止を対応しながら、メーカーが操業を再開することがいかに難しいかを示しています。(参照:CNN)
こうした状況において、多くの米国人は、経済の再開は早すぎると感じています。
CDCによると、5月25日までに、163万人を超える米国人が新型コロナウイルスに感染し、9万7669人が亡くなりました。身体的な距離を保つことで、国全体の新たな感染者数は減ってきましたが、ウイルスが消えたわけではありません。
ハーバード・ケネディスクール、ノースイースタン大学、ラトガース大学の研究者らの新しい全国調査によると、米連邦政府と一部の州知事が経済の再開を推進しているにもかかわらず、多くの米国人は、経済の再開に反対しています。
研究者らは、4月17日から4月26日の間に、全米50州とコロンビア特別区(ワシントンD.C.)に在住の約2万3000人の米国人を対象に調査しました。通常、米国では政治や社会の問題について、民主党支持者と共和党支持者は意見が分裂します。ところが調査の結果、新型コロナウイルスの危機において、多くの国民の意見が一致していました。
まず、多くの米国人が財政難に直面しているにもかかわらず、93%は、経済はすぐに再開すべきだとは考えていません。80%以上の米国人は、必須ではない事業の閉鎖を支持しています。レストランの制限(テイクアウトのみ)、学校の閉鎖、スポーツとエンターテイメントのイベントやグループの集まりの中止については、90%を超える米国人が支持しています。
また、科学者や医療の専門家は、高い信頼性を得ています。回答者の96%は、感染症に適切に対処するために、病院や医師を「ある程度」または「かなり」信頼しています。科学者と研究者についても同様で、93%の信頼を得ました。
一方、ホワイトハウス(59%)や連邦議会(57%)の政治への信頼は低くなりましたが、州政府への信頼度は大幅に高く、81%が「ある程度」または「かなり」信頼と回答しました。また、トランプ大統領の新型コロナウイルスの対応についての信頼は分裂し、51%が大統領に対して「ある程度」または「かなり」信頼している、49%が「なし」または「あまり信頼しない」と答えました。
猛威を振るう新型コロナウイルス
多くの米国人は、経済の再開に反対
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