水商売への偏見、高い賃料、人件費……危機に瀕する[夜の銀座]。六本木や歌舞伎町より崩壊はすぐそこに

[夜の銀座]崩壊シナリオ コロナ禍による「外出自粛要請」が夜の銀座を直撃している。高い賃料、人件費、そして「世間の目」がここで働く「夜の蝶」の羽をもごうとしている。青息吐息の彼女たちの声を拾った。

ゴーストタウンと化した高級歓楽街はコロナに屈す?

 安倍総理も小池都知事も口を酸っぱくして市民に外出自粛を要請しているが、その影響は特に夜の街において歴然だ。4月7日の緊急事態宣言から1週間ほどたった銀座を歩くと、「営業自粛」の紙がいたるところに張られ、ゴーストタウンの様相。日本有数の歓楽街は、コロナ禍に直撃されている格好だ。  クラブホステス経験もあり「銀座のオンナ」として20年生きてきたバーのママは現状をこう話す。 「銀座のお客様は六本木や歌舞伎町とは違い、年齢50代以上の大企業の方々や経営者・オーナーさんが中心です。大企業の中では、早い段階から夜の社交を自粛するようお触れが出ていたようで、ウチでは1月末から客足は落ち始めていますね。2、3月には売り上げは3分の1。東京都の休業要請は5月6日までですが、実質、銀座の“自粛期間”はもう3か月にわたっているということです」
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金曜の21時半という「最盛期」だが歩く人は皆無。ニュークラブ(キャバクラ)の客引きが弱気な声をかけてくる

 もっとも、一部の景気のいい人や経営者・芸能人たちはコロナなどおかまいなく銀座に繰り出し、彼らが集まる高級クラブは3月中も変わらずの活況だったという。だがそれも、某クラブでコロナ感染者が確認され、さらには飲み歩いてコロナに罹患したとされる志村けんさんの訃報(3月30日)で潮目が変わった。かくして3月末には、銀座の街の灯はほぼ消えたのだ。 「こんな状況でも家賃などの固定費は変わらず発生するため、銀座の店の経営者たちは頭を抱えています。銀座の家賃は最低でも1坪3万円で、それに管理費などが加算されます。ウチは家賃を含めた固定費が月40万円ほど。貯金を取り崩してなんとかやりくりしていますが、それもいつまでもつかわかりません」(ママ)
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店の看板には営業自粛を伝える張り紙が張り出されている店も多い

 苦境にあえいでいるのはママたちばかりではない。中級クラブでホステスをしている中条美里さん(仮名・30歳)はこう話す。 「私は銀座歴3年で、1年前に昼職を辞め、ホステス一本で暮らしています。ようやく同年代のOLさんより少し多い額が稼げ、軌道に乗り始めた矢先にコロナ騒動が起こり、4月から収入はゼロになりました。金融事情に明るいお客様から教えていただいた『新型コロナによる小口資金貸付制度』を申請し、20万円を借りてどうにか過ごそうと考えています」
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中級クラブで働く中条美里さん(仮名)は毎年、確定申告をしているため、社会福祉協議会の総合支援など、休業への公的支援が比較的受けやすかったという

窮状のクラブホステスに注がれる冷たい目

 こうして必死に糊口をしのぐ銀座のオンナたちだが、世間の目は思いのほか厳しい。  4月9日、銀座のママらが自民党本部を訪れ、政府の新型コロナウイルスに対する緊急経済対策をめぐり「接待飲食業を除外しないでほしい」と岸田文雄政調会長に要望書を提出した。これに対し、お笑い芸人の松本人志氏は自身の番組で「ホステスさんに自分の税金は払いたくない」と発言。また、銀座の名物ママである高嶋りえ子氏も「銀座ママらが物乞いとは恥ずかしい。『高給取りの自分たちは後回しで結構です!』と言ってほしかった」とツイートし、両者の論調に賛同する声も相次いだ。 http://twitter.com/ginzatakashima/status/1248437995708940288?s=20  だが前出バーのママは、これらの意見を短絡的だと切って捨てる。 「銀座にも収入格差があり、みんな事情が違うんです。スポンサーがいて援助を受けられる一部の人もいれば、それがない人もいます。世間がイメージする高給取りのホステスやママはごく一部なのに、さもそれが全体かのように語られては迷惑です」
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コロナ禍以前から不景気になっていた銀座
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