大学生が担うジェンダー運動の盛り上がり。しかし、リスクを負わなければ声をあげられない不公正な現状

イベントの様子 慶應義塾大学のミスコンテストの中止、就活セクハラの存在など、大学生の中でジェンダーに関わる問題が起きることが多い。一方、#MeToo運動などジェンダー運動の盛り上がりの中で、大学で声をあげ、それらの問題に向き合う学生も目立つようになってきている。  例えば、1月10日には上智大学でのセクハラ・アカハラ問題が報じられた。教員が学生の容姿について複数回行った発言などが大学側にセクハラとして認定されたという。昨年7月にはセクハラ・性暴力根絶に関するシンポジウムで学生生活を統括する学生センター長が、「(性的同意ワークショップの義務化に関して)これは絶対必要だから強制しますというのは、それはそれで一つの暴力なのかなと思う」、「加害者理解という所もやはり大事なのかなという風には思ったりして」などと発言した。  それに対し出席していた学生団体がセカンドレイプにも繋がる発言だと抗議、学生センター長はその役職を辞任するという騒動があった。この際に大学側に抗議した団体が「Speak Up Sophia」だ。

就活リスク、周囲の反対…それでも声を上げる学生たち

 Speak Up Sophiaの共同代表を務める上智大学出身の横井桃子(22)さんは、学生センター長の辞任騒動について、こう語る。 「性暴力に対して声を上げていた学生達に対し、学生センター長の発言は想像力が無いモノだった思います。その場には性暴力の被害者でもある学生が大勢いました。その場で被害者への労りの言葉もなく『加害者理解も必要』『性的同意ワークショップの義務化も一つの暴力』と言うのはセカンドレイプになってしまいます。  しかし、彼自身が問題であるとは考えていません。セクハラや性暴力に十分な理解がない人物が、学生を守る立場のトップである役職に任命されてしまっていたことが問題なのだと思います。だからこそ、理解を広げる活動が重要になってくるのだと考えています」
横井桃さん

横井桃子さん

 横井さんは、セクハラ被害を告発した伊藤詩織さんの話を聞き、著書『ブラックボックス』を読んだことをきっかけに運動を始めた。伊藤さんの行動は、大勢の当事者を勇気づけ、その後、セクハラの被害者や共感する人々が声を上げることの心理的な後押しになったという。 「自分も過去にイヤな経験をしてモヤモヤしていた時がありました。そんな時に聞いたのが伊藤さんの話です。『自分のカラダは自分のものだから、私のカラダにされたことは自分で決めていいんだ』『誰が私の体に何をしようが、許す権利も許さない権利も私にある』と感じ、自分のカラダが自分のものになった気がしました。  その後、伊藤さんのセクハラ被害を綴った本を読んだ時はショックで何時間も起き上がれませんでした。怒りを感じ、性暴力が起きてしまう社会を変えたいと、声を上げ続けています」

性的同意のワークショップを開催

 横井さんが共同代表を務めるSpeak Up Sophiaではジェンダー問題を中心に声を上げることを大切にして活動している。サークルとして特に力を入れているのが、性的同意ワークショップの開催だ。性的な行為をする際に確認されるべき同意があることを、ワークショップを通じて広めている。 「私たちは性暴力をなくすため、性的同意を広める活動を大学内から始めています。活動の中で酷いことや腹が立つことを言われることもありますが、それがまだこの社会でそのような活動が必要であることを示していると思っています」  彼女らのような実名を出して声をあげる学生の活動には、社会的リスクも伴うのが現状だという。 「日本では性の話題はバッシングを受けやすい。メディアに出れば、コメント欄やSNS上で中傷を受けることもある。ネット上に残るバッシングのせいで就職活動に影響がでないか不安に思いながら活動するメンバー、両親に反対されながら活動するメンバーなど多くのリスクを犯しながら活動しています。このように学生がリスクを犯しながら活動を続けなければならない状況を作ってしまったことに対しても、大学は責任があると思います」  おかしいと思ったことに声を上げて発信するだけで多くの弊害があるのが実情だ。日本で社会運動をすることの難しさがここにもある。
次のページ
広がりを見せる大学でのジェンダー運動
1
2