5日間で自殺未遂を6回。大便を床に塗りつける……。それでも拘束する入管の異常

2017年に首吊り自殺未遂

デニズさんは過去何度と自殺未遂を繰り返している。2017年に首吊り自殺未遂したとき、入管側が記録として撮影した画像

入管に「殺されかけた」クルド人男性

 3月24日。出入国在留管理庁(以下、牛久入管)に延べ4年も収容されていたデニズさん(トルコ国籍のクルド人)が仮放免(収容を一時的に解く措置)された。迎えに来ていた日本人妻さんをハグすると、デニズさんは絞り出すような声で泣いた。  すでに昨年、長期収容による「拘禁反応」との診断も受けていたデニズさんは、今年2月になってからは約10回の自殺未遂を起こすほどに精神状態が乱れ、関係者の誰もが近いうちに未遂では済まないと心配しただけに、そのハグを見て筆者はほっとした。  昨年1年間だけでも、デニズさんは入管職員による暴力的な制圧を受けたり、仮放免を求めての集団ハンストに参加したり、その結果として仮放免はされるがわずか2週間後には再収容されるという奈落の底に突き落とされるような処遇を2回も経験した。  今回の仮放免は1か月間という普通の仮放免であり、今後はその更新(延長)が重ねられると思うが、それでも、デニズさんが負った心の傷を癒すには長い時間がかかる。デニズさんが牛久入管でどんな経験をしてきたのかを2回に分けてリポートする。 【参照】⇒第1回はこちら

5日間で自殺未遂を6回

 5日間で自殺未遂を6回。大便を床に塗りつける。目の焦点が合わない……。牛久入管では、心を壊す外国人が続出している。  牛久入管には、何かしらの理由で日本での在留資格がない外国人が約300人収容されている。彼らは「本国送還」を前提に収容されているが、問題は、2016年頃から、2年や3年といった長期収容が常態化していることだ(最長は約6年)。本国送還という前提は変わらないが、一時的に収容を解く「仮放免」という措置を受けられる人もごくわずか。  いったいいつ外に出られるのか。自分の将来が一切見えない境遇に多くの人が「抑うつ状態」や「拘禁反応」などの精神疾患を抱えている。 2月27日。筆者は牛久入管でデニズさんに面会した。 デニズさんはクルド人が差別や弾圧される日常から逃れるために2007年に観光ビザで来日。難民認定申請が認められず、オーバーステイをしたこともあり在留資格が付与されず、幾度と収容と仮放免を繰り返してきた。  2016年6月に3度目の収容となるが、2016年から出された入管庁の「2020年東京オリンピックまでに、不法滞在者等『日本に不安を与える外国人』の効率的な排除に積極的に取り組むこと」や「重傷者でない限りは収容を継続する」との通知に従い、デニズさんも長期収容されることになる。
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天井のエアコンの通風孔で首を吊ろうとした
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