米在住内科医が提言。日本も直ちに大規模な新型コロナウイルスの検査を実施し、真の感染の広がりを把握せよ

コロナウイルス 米国では新型コロナウイルスの感染者が激増しています。私が住んでいるマサチューセッツ州ケンブリッジ市は、市内のハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などの大学の授業は全てオンラインに変更し、寮は閉鎖となり学生は帰省しました。大学の研究室は、ウイルスに関連する研究など、「必須」と見なされるもの以外すべて停止し、海外からの多くの研究者や留学生は帰国。地元の小中高校は休校になり、レストランはテイクアウトとデリバリーのみ、ジム、バーやカフェなども閉鎖しています。学会やコンサートなどのイベントは全てキャンセル、公共の集まりは25人まで、他人との距離は6フィート(約1.8メートル)保たなければなりません。病院、食料品店や薬局などの不可欠な事業は継続していますが、それ以外は閉鎖され、多くの住民は家で仕事をしています。  マサチューセッツ州だけでなく、ニューヨーク州、カルフォルニア州、イリノイ州などの知事も「外出禁止(Stay-at-home)」を要請しています。多くの米国人は、生活は不便ですが、感染症のパンデミックを抑えるために知事の要請を受け入れています。まず、このようになった経緯をご説明します。

新型コロナウイルスの初期管理に失敗した米政府

 2020年2月26日、カリフォルニア州で、米国で初めて市中感染(感染源が不明だが米国内とみられる感染)による新型コロナウイルスの患者が確認されました。同時に、米政府の新型コロナウイルスの初期管理に対する深刻な問題が浮き彫りになりました。2月28日の米科学誌「サイエンス」は「米国は信頼できる診断用検査の開発に遅れをとっている」と批判しています。  まず米疾病管理予防センター(CDC)は2月5日、米国の各州および地方の研究所に、新型コロナウイルスの検査キットを送り始めました。ところが12日、このキットの不備が明らかになり、各研究所は検査ができなくなりました。さらに2月27日までCDCが、検査の対象を「中国へ渡航歴があり症状のある人」と「新型コロナウイルスに感染した患者と接触した可能性のある人」に限っていました。結局CDCは、2月末までに275検体しか検査していませんでした。

失策を認め、全力で感染と戦う

 こうした中で、米国立アレルギー・感染症研究所 (NIAID) のアンソニー・ファウチ長官が、3月6日に米国医師会雑誌のインタビューで、「CDCは明らかに失策しました。一般的に、新型コロナウイルスのような新しい病気や感染症が出現したときに、CDCは迅速に検査を開発し、州や地域の保健当局に配布するべき」、「現在、CDCは、民間の企業に助けをかりて、新型コロナウイルスの検査を行なっています。目標は、検査がルーテインになり、数百万の検査が利用できるようになること、その後優れた企業が参加し、検査がズムースになることです」と述べました。  ちなみに、米国の宝と言われるファウチ長官は、これまで6代の大統領のアドバイザーとして、HIV/AIDS、エボラ熱、SARSなどの感染症との戦いに貢献してきました。今回の新型コロナウイルスの危機でも指導力を発揮します。  ファウチ長官は米ワシントンポストのインタビューで「政府のトップの感染症専門家の1人として、長年のキャリアから学んだことは、新型コロナウイルスに対するアプローチは、『封じ込め』『緩和』『検査を増やす』『治療とワクチンの開発』から始まります」、「もし米国が私の説明したような感染の予防をしなければ、イタリアと同じようなひどい状況になるでしょう。しかし、私たちはそこに行くとは思わない」「米国民のために最善を尽くしたいのなら、暮らしは今までとは違うことを受け止めなければならず、しばらく真剣に取り組む必要があります」と述べます。  また米国医師会雑誌のインタビューで、ファウチ長官は次のように説明します。  「封じ込め」は2種類あって、一つは渡航制限(例えば、中国からの渡航制限は、感染の広がりが抑えられるので効果的)で、外からの感染をブロックする。もう一つは、接触痕跡(国内で感染者を見つけた時、その人を追跡することで起源がわかる)です。「緩和」は、外から感染をブロックや追跡するのではなく、すでに国内に問題があり、それ以上の感染の広がりを防ぐことです。例えば、社会的な距離を置く、混み合っている場所を避ける、学校の閉鎖、イベント中止、家で仕事をするなどです。全国的な公式の緩和策(例えば、全米の学校閉鎖)ではないでしょう。公的な義務はありませんが、個々(個人、ビジネス、学校、各地域など)が独自の決定(旅行に行かない、家で仕事する、イベントのキャンセルなど)を下すことになります。
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ニューヨーク州知事「責任は私がとる」
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