分散できるほど資金に余裕がない人必見。「小型株集中投資」で億超えを果たした男の手法に迫る

見つけて育てる投資

イラスト/いらすとや

 値動きの軽い「小型株集中投資」によって、一撃1億円以上の爆益を見事摑んだ投資強者が存在する。自身の体験から編み出した「無法の投資哲学」を余すところなく公開。刮目あれ!

低リスクの「チャンス株」で一点勝負!

 投資の格言に「卵は一つのカゴに盛るな」というものがある。資金をいくつかの銘柄に分けて保有することで、万一、どれかが暴落してもほかでカバーできる分散投資だ。リスクヘッジにおける投資の鉄則である。  しかし、そんな常識を打ち破り、「小型株への集中投資」によって巨額のリターンを得た猛者がいる。投資家の遠藤洋氏だ。 「ホームランを狙える小型株を厳選して中長期投資を行います。ウオッチ銘柄は多くても3つまでが好ましい。この手法で僕は’17年に『北の達人』で+1200%を叩き出すなどして、億単位のリターンを得られました」  北の達人(東証1部2930)という当時はまだマイナーだった銘柄を導き出した遠藤氏。このような投資スタイルに辿り着いた経緯とは? 「投資を始めたのは大学3年生のとき。暇つぶし感覚でFXをやってみたのですが、なんの知識もなかった僕は、レバレッジを限度いっぱいの100倍に設定し、アルバイトで貯めた虎の子の30万円を一瞬で吹き飛ばすことに。しかし、それで火がついた。猛勉強をして、株式投資にも手を出すようになっていったのです」  投資の世界にどっぷりと浸かるも、なかなか結果が出ない日々が続いたという遠藤氏。契機となったのは、兼業投資家ならではの悩みからだった。 「銘柄を分散できるほどお金がなかったんです。そんな状況だと複数銘柄への投資は確かに致命傷は回避できたものの、ローリスク・ローリターン感が否めなかった。そこで、当時働いていた会社と関わりがあり、勢いがあると感じていたASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)の『ファンコミュニケーションズ』の株を購入したところ、大当たり。続いて、パズドラが好調だった『ガンホー』の波にもうまく乗ることができ、資産を増やせました。その後は、自分の好きなものや得意な分野から伸びしろのある銘柄を厳選し、集中投資を行う手法へとシフトチェンジしていきました」  分散投資が有効なのは、億単位の資産家だけ。資金が限られている個人投資家が同じことをしても資産はたいして増えないし、むしろリスクが高まるというのが遠藤氏の持論だ。

テンバガー銘柄発掘のカギはスピード感と時価総額にあり

 とはいえ、惚れ込んだ銘柄と一蓮托生になるほど入れ込むのはどうしても恐怖がつきまとう。「1年以内に3倍どころかテンバガーになる銘柄もある」と遠藤氏は自負するが、その具体的な手法について尋ねた。 「まず大切なのは、皆が欲しいと思う商品を提供しているかどうか。最近だと、音声翻訳機のポケトーク。これは発売開始のニュースを見て株を購入しました。近年のインバウンド消費の増加に伴い、必ず需要があると判断したからです。肝となるのは、どれだけ早く目をつけられるか。有名になってからでは高値摑みのリスクが高まります。その後の決算を見比べて、自分の感覚が世間と一致していたか、の答え合わせに使うくらいのスピード感が重要です」  自分の得意な分野であればこうしたニュースにも敏感になれる。世間で話題になってからではもう遅いのだ。 「もうひとつ大切なのは、株価だけでなく時価総額を見て市場規模をしっかり把握しておくこと。なぜなら、市場規模がわかると株価の伸びしろがわかるからです。例えば、ほぼ同じ領域を扱っている時価総額1兆円の大企業Aと時価総額100億円の無名企業Bがあったとします。仮にBが10%でもAのシェアを奪うことができれば1000億円もの市場を手にすることになり、単純計算でBの時価総額は10倍となります。『無名企業の小型株は不安定で危ない』『有名企業の大型株は安定して儲かる』というのは間違った認識で、むしろ無名企業はちょっとしたシェア拡大で爆発的に儲けられる潜在能力があると考えたほうが合理的。僕は、基本的には時価総額が300億円以下の企業を狙って投資を行っています」 遠藤氏のトレード実例

少数精鋭で絞りこんで保有銘柄オタクになれ!

 株価のみをチェックして購入を検討する投資家が多いため、この手法はライバルが少ないのもメリットのひとつ。ただ、株価が必ずしも目論み通りに上がってくれるとは限らない。 「1年以上目が出ない銘柄もあります。切るタイミングとしては、仮に100万円で購入した銘柄が90万円にまで下がったとして、今、新規でその銘柄を90万円で買うかを自問自答してみる。保有して終わりではなく、その銘柄にお金を預けているという感覚を持ち続けることが大切です」  そして、一旦保有した銘柄は、オタクを自任できるほど調べ、知り尽くすことも成功の近道だと遠藤氏は考える。 「ビジネスモデルを人に説明できるくらい徹底的にその企業について理解してください。時価総額はいくらか。業績は伸びているのか。大株主は誰か。社長はどんな人物か。社員の平均年齢は? すべて即答できるくらい深掘りできて初めてテンバガー銘柄の傾向がわかり、自分の身になると思います。自分の好きな分野の1~2企業くらいなら、それができるはず。テンバガー銘柄は見つけ出して育てるものです」  個人投資家はローリスク・ローリターンな分散投資ではなく、ローリスク・ハイリターンな「小型株集中投資」で一攫千金を狙う。そんなスタイルこそ、億り人への近道なのかもしれない。

<遠藤氏が注目するテンバガー候補>

●グッドライフカンパニー(JQ2970) 現在株価 2702円 時価総額 3792百万円 PER 10.96倍 PBR 2.21倍
グッドライフカンパニー(JQ2970)

グッドライフカンパニー(JQ2970)

時価総額は約40億円。RC造りマンションの企画・開発を富裕層向けに行う。九州を拠点に活動し、将来的にハブになる可能性も。業界的市場が大きい。6割の不動産投資家がリピートしていて、2割のお客さんが既存顧客の紹介と信頼度も抜群。早めにチェックされたし! ●エードット(東マ・7063) 現在株価 4080円 時価総額 9923百万円 PER 55.97倍 PBR 9.39倍
エードット(東マ・7063)

エードット(東マ・7063)

時価総額は99億円。シーチキンマヨがダントツ売り上げ1位だった牙城を崩した、ローソンの「悪魔のおにぎり」のブランディングを行った会社。ブランディングをメイン事業にしている。だが、モノが何でもある時代はブランド力のあるものしか売れないため、時代の流れにも沿っている ●リブワーク(東マ・1431) 現在株価 1833円 時価総額 9936百万円 PER 21.24倍 PBR 5.26倍
リブワーク(東マ・1431)

リブワーク(東マ・1431)

熊本・福岡を地盤にしている注文住宅メーカーで、時価総額は99億円。4年前と比べると既に株価10倍にまで成長。今後は関東にも展開予定で、事業拡大が予想される。東証一部を目指した前提の経営をしていると明言しており、今後の成長が期待される ※株価は’20年2月13日現在のもの 【投資家・遠藤 洋氏】 大学卒業後、ベンチャー企業に入社するも、投資で得た資金を元手に独立。1年のうち半分は国内外を旅して自由を謳歌している。著書『10万円から始める!小型株集中投資で1億円』(ダイヤモンド社) 取材・文/櫻井一樹 浜田盛太郎(本誌) 図版/ミューズグラフィック