中国はなぜアフリカで力を増しつつあるのか? アフリカにおける中国の「超限戦」的支配構造

アフリカで力を増す中国

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次の世界を担うアフリカと中国

 21世紀の世界の牽引役として期待を集めているアフリカ、その中でも特に注目を浴びているのはナイジェリアである。といっても多くの方にはなじみがないだろう。そもそもどこにあるかもわからない人がほとんどだと思う。  国土は日本のおよそ2.5倍、人口は1.9億人、GDPは世界31位となっている。ちなみに国連の予測によると2020年以降人口増加率の上位10位はすべてアフリカ諸国で占められる。2050年にはナイジェリアの人口は世界第3位まで増加し、世界の黒人の7人にひとりはナイジェリア人となる。ちなみに2030年の段階で世界の5人にひとりがアフリカ人となる計算だ。  経済発展もめざましく、すでに金融拠点として機能している。さらに同国から諸外国に移民する者も増えており、ナイジェリア移民のネットワークが世界に広がっている。彼らはいずれも高い教育を受けており、愛国心を持ち、世界の情報とノウハウをリアルタイムでナイジェリアにフィードバックしている。ニューズウィークは2020年1月15日の記事で「黒い中国(Black China)」とナイジェリアを表現した(参照:「Newsweek」)。記事中では触れていないが、この言葉には2つの含意があるように感じた。ひとつは中国のように成長を遂げ、超大国となる可能性の指摘、もうひとつは中国にコントロールされているという意味である。  ナイジェリアは芸術とエンタメ分野でも存在感を増している。映画産業はNollywoodとも呼ばれる。ハリウッド、ボリウッドに次いで3番目に大きく、毎週5本の映画が封切られ、国内および国外(ネットやデジタル・テレビ経由)で視聴される。ナイジェリア国内にはまだ家にテレビがない人も少なくないが、そうした人々もカフェやバーなどで映画を楽しんでいる。  ハイテク産業もナイジェリアの首都ラゴスを始めとするいくつかの都市を中心に数千のスタートアップ企業がひしめいている。  20世紀にはBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の成長が注目されたが、今注目されているのはMINT(メキシコ、インドネシア、ナイジェリア、トルコ)である。  ナイジェリアに限らず、アフリカの多くの国は人口の増加と経済発展を続けており、そこには中国の資本とメディアが入り込んでいる。すでにこの連載で指摘しているように世界におけるアフリカの重要性は増しており、中国はそれを見越して着々と準備を進めてきた。一帯一路もそのひとつである。本稿ではアフリカにおける中国の活動をご紹介したい。

欧米とは違う新しい選択肢(権威主義と経済発展)を提示する中国

 中国がアフリカで行っているのは「欧米とは違う新しい選択肢を提示」ということだ。よいことのように聞こえるが、民主主義的価値観に照らすとそうではない。ひらたく言えば、「独立を維持しつつ経済発展を促進する」ことなのだが、独立とは既存の権威主義(独裁や全体主義など)の維持に他ならない。表向きは民主的プロセス(投票など)を経るものの、内容はそうではない。  欧米の援助あるいは経済関係において、民主主義的価値の尊重は重要であり、人権侵害などがあれば経済制裁を加えられることもある。これに対して中国は民主主義的価値の尊重には重きを置かない(むしろ尊重していない方がつきあいやすい)。そのためアフリカ諸国の多くは現状の政治体制を維持しつつ、経済発展を遂げることができる。  これには欧米の苦い失敗も影響している。かつてアフリカにおいて民主主義は混沌と破壊をもたらす劇薬だった。くわしい内容は『民主主義がアフリカ経済を殺す』(2010年1月14日、ポール・コリアー)を読んでいただきたいが、急に民主主義的プロセスだけを導入してもうまくいかないということが図らずも実証されてしまったのだ。とはいえ、欧米的価値観の中では権威主義や人権侵害は非難の対象となるし、人権保護団体などが黙っていない。これに対して中国はアフリカの現状を受け入れ、経済協力を中心とした実践的な活動を柔軟に行うことができる。アフリカ諸国がどちらを選ぶかは明白だ。  念のために申し上げると、筆者は民主主義や人権の尊重を否定しているわけではない。しかし、権威主義かつ人権侵害が横行する国のリーダーが、民主主義や人権の尊重を強制する強国と手を組むことは自分で自分の首を絞めるようなものである以上、彼らが欧米よりも中国を選ぶのは当然と言っているだけだ。
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アフリカのメディアとSNSを支配する中国
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