「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」は善意の悪法

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Olya Adamovich via Pixabay

物議醸す「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」の素案

香川県議会は、「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」の素案*をまとめ、可決すれば令和2年4月からの施行が予定されるという報道が流れ、大きな話題となっています。 〈*香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(素案)〉  香川県議会の素案によると、インターネットやコンピュータゲームの過剰な利用は、子どもの学力・体力の低下、ひきこもりや睡眠障害、視力障害などの身体的な問題の原因となることや、国連のWHOでも「ゲーム障害」が疾病と認定されたことなどから、香川県においては子どものネットやゲーム利用を控えるべきだと制定されたものです。  この条例自体に罰則規定は無いものの、香川県、学校、保護者、依存症対策事業者(病院やカウンセラー等)、ネット・ゲーム業界、県民、市町、そしてインターネット・ゲーム事業者などに対し、県内の子どもがネット・ゲーム依存症にならないための、あらゆる支援や予防策についての努力義務を課しています。  特に保護者は、子どもがスマートフォンを使用することについて、使用に伴う危険や弊害をふまえて平日は1日60分・休日は90分といった使用時間や、中学生までは午後9時までといった深夜使用の制限についても指針を示しています。  この条例は、一見すると、子どもの正常な育成のため、ネットやゲームに夢中になり過ぎないための、温かい行動指針にも見えます。  私は教育ジャーナリストの立場として申し上げるなら、この条例が学校生活におけるスマートホン使用を制限した校則であるとか、単に家庭内の親子の約束事であるなら、とても素晴らしい規定だとは思います。しかし、これが「条例」となると話は別です。香川県条例で、かつ努力義務のみの訓示規定ばかりとはいえ、県民の行動を著しく制限する法令であることに気づかなければなりません。

そもそもネット・ゲーム依存は学業に差し障りがあるのか

 インターネットで動画を閲覧し、SNSで友人と延々と交流し、その他の時間はスマートフォンでゲームばかりしていると、確かにその時間が勉強やスポーツに充てられることはありません。物理的に学習時間は少なくなるし、外出や体を使って活動する時間も少なくなることから、確かに学力も体力も向上は見込めません。しかし、ネットもゲームも娯楽です。家でテレビや映画に夢中になるのと大差はありません。  子育て世代である40~50代の大人なら、昔はインベーダーゲームやファミコン、そしてマンガやテレビに夢中になった世代でしょう。かつては不良のたまり場だったようなゲームセンターへ行くことと比較すれば、飲酒・喫煙・犯罪に触れるリスクは格段に少ないのですから、深刻に考える必要はありません。
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ネットやゲームの効用を無視する素案
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