タイの歯科に行けば、二度と日本の歯医者に行く気はなくなると説く筆者。その実態をレポート
虫歯の痛みが激しくなり、歯医者に向かう。レントゲンを撮った後口の中を歯科医が見て、「ああ、これは神経をとるしかありませんね」と宣告される。その後数か月にわたり毎週歯科に通っては、問題の歯にあけられた穴に針のようなものを通し、痛い思いをする。もちろん、毎回数千円を支払う―多くの方に同じような経験があるはずだ。
だが、その治療法が全て間違いだったとしたらどうか。この治療が「痛い」こと自体がおかしいとしたらどうか。ここからお伝えするのは、日本の歯科治療がいかに遅れているか、そして「まともな」国でどのような歯科治療を行っているかという実態の報告である。
最初に一言。日本の歯科治療は、タイの足元にも及ばない。いや、この表現ではタイに失礼だ。「足元」では少なくとも同じ土壌に二者が立っていることになるからだ。天と地、マリアナ海溝と冥王星くらい離れているといっても過言ではない。
動かぬ証拠が、筆者自身である。上記の「神経をとる治療」を正式には「根管治療」(英語名:Root Canal Treatment、以下“RCT”と表記)という。日本のRCTでひどい目にあい、バンコクで再治療したが、一週間弱で完治してしまった。
以来、日本の歯科は一切信用できないため、年に二回程度バンコクに通い、定期検診を受けている。「贅沢」という方がおられるかもしれないが、いまどきLCCで往復二万円弱で行くことも可能である。地元に帰省するより安上がりなのである。
筆者は普段車に乗らず、自宅兼事務所でひたすら原稿を書き続け、港区に行くのも月に一度あるかないかである。港区女子など、未だに一度もデートしたことがない。そういう生活なら、バンコク歯科検診は決して高い出費ではない。最近は、筆者の話を聞いてタイの歯科に興味を持った友人を何人か連れて行くことも増えてきた。
その中でも、日泰の歯科格差が最も浮き彫りになるのがこのRCTである。筆者が常々周囲に伝えているのは、「歯科治療は全てタイでやるほうがいいですよ。しかし、どうしてもすべてが無理と言うなら、RCTだけはタイでやらなければなりません」である。
冒頭の写真をご覧いただきたい。この一枚で、日泰の格差が全て浮き彫りにされている。
第一に、「口に張られている緑のシート」である。これを「ラバーダム」とよぶ。
そもそも論からいって、口腔内は不潔である。常に高温多湿で、細菌の数は大便より多い。ラバーダム使用の目的は、問題となる歯を一本だけ出し唾液等が患部に入るのを防ぎ、二次感染を未然に予防すること、そして消毒用薬品等を呑み込まないようにすることだ。
ラバーダムを使用せずにRCTを行うのは、ドブ河につかりながら開腹手術するのと同じである。
日本において、ラバーダムを使用しない理由は簡単である。「保険でラバーダム費用がカバーされない」からだ。
つまり、使用する場合は歯科医の持ち出しになってしまうのだ。要は正直者が馬鹿を見る仕組みになってしまっているということだ。