使えない「最新の」自己啓発本やビジネス本を何冊も買う前にやるべきこと

 海外の心理学に関する論文や書籍を読んでいると、「これは日本人には合わないな」と思うものを見かける。

文化によって心理術に効果にも違いが

ビジネスのイメージ

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 ボディランゲージを使って相手の心を読んだり、気持ちを誘導したり、モチベーションを高めたりの手法においては、文化的な要素の影響も大きい。それを考慮して身につけて日常生活で使わなければ、効果を発揮しないどころか逆効果になる危険性がある。  そのような傾向は、自己啓発の領域についても言えるのではないだろうか。  私も自己啓発本を読むことが多いが、その本に出てくる心理学の技術が、文化的要素が強いため、そのまま取り入れても日本では効果がないのではないかと思う場合がある。  本来、日本人に合わない自己啓発テクニックを身につけることは、例えるなら、RPGで魔法使いに物理攻撃を覚えさせて、戦士と戦いに行くようなものだ。文化的・人種的に合わない技術をどんなに身につけても、スキルアップするには、無駄に遠回りすることになるし、本家には到底叶うはずがない。

新渡戸稲造の“自己啓発本”

 そういう違和感を抱えながら、最近、新渡戸稲造氏の書いた『世渡りの道』『修養』『人生読本』の3冊から、『自己を高める』というテーマのものを抽出して1冊にした『運命を拓きゆく者へ』(実業之日本社)という本に出会った。  新渡戸稲造氏は『武士道』を書いたことで有名なので、多くの人が知っているだろう。私も武士道に関する文献を十数冊読んだが、武士としての美徳は美しいが、今の社会のあり方と合わない点が多く見受けられる。  しかし、『運命を拓きゆく者へ』では武士には関係なく、「日本人が国民性として持つ強み」「それをどう高めるか」について書かれている。  もしかしたら『武士道』を書く過程で、日本人の国民性を研究して、その根底にある潜在的な強みや、それを高める方法に辿り着いたのかもしれない。
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アップデートは過去を活かすためのもの
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