「モラハラはお前だ」、「お前がモラ妻」と、主人から言われた――。
法律相談に来た30代後半の女性は、そう言った。
そして「私、料理下手だし、掃除もきちんとできません。主人から何か言われたら、言い返すし、子どもにきつく当たることもある」と説明した。
女性は「私は、モラ妻でしょうか?」と私に訊いた。
さて再度、モラ夫、モラハラの定義(大貫説)をいおう。
モラ夫とは、「
男尊女卑などの社会的文化的規範群(モラ文化)を背景に、妻に対する支配を確立、強化、維持しようとする夫」をいう。モラハラとは、「
妻に対する支配を確立、強化、維持のために行うモラ夫の言動」をいう。
そして残念ながら、
日本の社会はいまだ、江戸中期に始まる女大学(おんなだいがく、未婚女性に対する人生訓・文化的規範)や、明治政府の推し進めた良妻賢母主義の強い影響下にあり、男尊女卑等の文化を背景に、モラ夫やモラハラが蔓延している。
日本の男性の多くは、甘やかされて育ち、女性に対する優越を当然のこととして生きている。
他方、
女性は夫のため、子どものため、家庭の維持のため、我慢することを余儀なくされ、夫に従属している。
モラ文化においては、男性が支配者であり、女性は従属者である。そして、男性は、社会化(幼少時、社会的文化的規範を取り込むこと)の過程で、モラ文化を内在化させ、モラ夫予備軍として育ち、女性は「女らしく」育てられる。
以上、「モラ夫」には、その背景にモラ文化があり、モラ夫を支えているが、「モラ妻」にはそれを支える文化的背景はない。すなわち
男女は非対称であって、「モラ夫」と「モラ妻」を並列させると本質を隠蔽してしまう。