すぐに部下に辞められる上司に足りない3つの心理戦略

 最近になって、メディアでよく見るようになった「退職代行業者」。彼らは退職を言い出せない会社員の代わりに、勤めている会社に連絡をして退職をする手続きを行ってくれる。インターネットで「退職代行」と検索すると、「退職成功率100%」「円満退社」などの広告が目に止まる。

問題は辞める「手段」ではなく「原因」

キレる上司イメージ

photo via Pexels

 彼らの存在は、さまざまなメディアで賛否両論が出ている。「退職代行業者は、退職を言い出せない社員が精神が追い詰められるのを救っている」や、「退職業者を使うと仕事への責任感を持たなくなる」といったようにだ。  このような議論も見ていると、そもそも視野のフォーカスが狭すぎるのではないかと感じる。  仮に退職代行業者を頼るという「手段」を封じたところで、また新しい手段を講じる業者が現れるだろうし、何も言わずに会社を辞めてしまう人もいるだろう。  例えるなら、老朽化したバケツに一箇所空いた穴を塞いだところで、また新しい穴が空いてしまうようなものだ。そもそも、バケツを交換しなければ意味がない。  なので、退職業者の善悪を議論するのはフォーカスが狭すぎており、本来議論すべきことは、退職代行業者を頼るという「手段」をとるに至った、「原因」についてだ。  

業務的なコミュニケーションは逆効果

 その「原因」として考えられのは、職場での「非業務的コミュニケーションの不足」だ。「非業務的コミュニケーション」とは、その名のとおり仕事とは関係のない話をすることだ。  実は仕事を辞める話というのは、業務的な話ではなく、非業務的な話だ。なぜなら、仕事を辞める理由というのは業務的なものではなく、基本的にプライベートな理由であり、非業務的な会話だからこそ、日頃から非業務的なコミュニケーションができる環境を作っておく必要があるのだ。 「職場でのコミュニケーション活性化を!」を掲げた企業でよく実施されるのが、面談として月一回時間を取って一対一で会話をする時間を取る定例的なコミュニケーションだ。  しかし、これは業務的なコミュニケーションなので、実は職場環境の改善に一定以上の効果を発揮しないし、むしろ逆効果になる可能性がある。  業務的なコミュニケーション時間を増やしたところで、上司は「よし、日頃からちゃんとコミュニケーションが取れている」と勘違いするようになるし、それで部下が辞めたら「あれだけ信頼してたのに!」と逆上するだろう。また、部下が自ら話をしようという主体的な意欲も失われていくだろう。
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心を掴む3つの心理テクニック
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