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明け方の幹線道路で、大型トラックが路肩に列をなして停車し、運転手たちが仮眠を取っている光景を見たことはないだろうか。これが違法駐車として摘発を受けるケースが後を絶たず、社会問題になっている。
しかし、時間通りの配送を求められる運転手は無駄なく配送ルートを走行する必要に迫られ、その結果として路上で仮眠を取ることになってしまうのだ。これは運転手個人に帰せられるべき責任ではなく、厳しく苛酷な労働条件を強いている企業や社会の問題だ。
アデコが10月16日に発表した調査では、道路貨物運転手の5人に1人が「睡眠不足や疲労が原因で事故を起こしたこと、もしくは起こしそうになったことがある」と回答していたことが分かった。本記事ではこの調査をもとに、現代社会で配送ドライバーが置かれている状況について考えてみたい。
道路貨物運転手の約6割は、労働日の平均睡眠時間が6時間未満
アデコによる調査は道路貨物運転手400人を対象としたものだ。まず労働時間についてだが、1日あたりの平均的な拘束時間は「8時間~13時間未満」がもっとも多く、全体のちょうど6割を占めている。次に多いのが「13時間~16時間未満」で、こちらは26.3%という数字だ。なんと「16時間以上」との回答も9%あり、約1割におよんでいる。「8時間未満」と回答したのはわずか4.8%にとどまった。
また「1日の拘束時間が15時間を超えることが週に何回あるか」という質問に対しては、過半数のドライバーが週に1回以上は15時間以上の労働を強いられていると回答した。
また、「1回の連続運転時間が4時間を超えることがひと月に何回あるか」との質問に対しては、合計39.5%が「ひと月に1回以上ある」と回答し、そのうちの24%を「5回以上」が占めた。
今更確認する必要もない基本的な事項だが、労働基準法では法定労働時間を原則として1日8時間・1週40時間以内と定めている。調査の結果はこの範囲内で働くことのできているドライバーがほとんどいない状況が現実であることを物語っている。
トラック運転手に関しては
「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年労働省告示第7号)」によって、1日の労働時間の上限が13時間(延長した場合は16時間)とする基準が設けられている。このような公示によって制限を設けなければならないほど、トラック運転手の労働は長時間に及ぶ傾向にあるのだ。
またこの基準に示されている「4時間走った場合は必ず30分以上の休憩時間を設けないとならない」という点も守られていないケースが多い。配送ドライバーは日常的に長時間の労働を強いられ、あまつさえ常に緊張を強いられる、強度の高い労働をせざるを得なくなっているのだ。
その結果として生じてくるのが十分な睡眠時間を確保できないという状況である。調査の結果からは約6割が労働日の睡眠時間を6時間未満に限定されていることが明らかになった。
海外の調査研究では、人間が十分なパフォーマンスを発揮するためには8時間の睡眠が必要であるとの結果も出ている。6時間の睡眠時間が10日以上続くと人間のパフォーマンスは徹夜した場合と同じ程度にまで低下してしまうという。この実験調査の結果を踏まえて人間に必要な睡眠時間を8時間とした場合、それを満たしていると回答したドライバーはわずか4.3%に過ぎないことになる。