店が増えても買い物難民!?「食強化」に挑むドラッグストア、「業態拡大」のその先にあるものは

3店がしのぎを削る激戦区

幹線道路沿いに「クスリのアオキ」「ゲンキーフード&ドラッグ」「スギ薬局」の3店が並んで出店する(岐阜県)。
とくに郊外型ドラッグストア激戦区の「九州地方」「中部地方」では「あえてライバル店の前に出店」するという光景が各地でみられる。

ドラッグストア、各社で異なる販売品目と業態拡大の方向性

 ドラッグストアの道を挟んでドラッグストア、そしてその隣にもドラッグストア…といっても、ここは大都市の駅前などではなく地方都市の郊外。しかも規模が小さな都心型のドラッグストアとは異なり、それぞれの店舗はかなり大型だ。  ドラッグストア業界上位各社の売上推移をみていくと、業界トップのツルハHD(以下、ツルハ)、2位のウエルシアHD(以下、ウエルシア)のようにM&Aにより成長を遂げた「イオン系ドラッグストア」、そして3位のコスモス薬品(以下、コスモス)など「郊外型が中心のドラッグストア」が大きく売り上げを伸ばしている一方で、5位のマツモトキヨシHD(以下、マツキヨ)など「都心型が中心のドラッグストア」の売上が頭打ちになりつつあることは以前の記事で述べた通りだ。  ひとことにドラッグストアといっても、「都心型」と「郊外型」では、その店舗規模や品揃えにも大きな差が出てくる。今回は、ドラッグストア大手各社の「販売品目」、そして「業態拡大」に注目する。
ドラッグストア大手7社の売上高推移

ドラッグストア上位各社の売上推移。各社決算より作成。

急成長する郊外型ドラッグストア、成長のカギは「食品」

 以下に、ドラッグストア大手各社の「薬以外」の売上品目比率を示す。なお、業界4位であり近年「ダイレックス」業態など郊外型大型店に力を入れるサンドラッグは品目別の売上高を出していないため、ここではコスモスと同様に地方(福井県)に本部を置き小商圏型の郊外型店舗をドミナント展開するという戦略で成長を遂げた「ゲンキー」、そして栃木県に本部を置く北関東の雄「カワチ薬品」(以下、カワチ)を「郊外型」の代表例として示す。  これを見ると、都心型中心の「マツキヨ」、「スギHD」(以下、スギ薬局)、「ココカラファイン」(以下、ココカラ)の3社は「化粧品」郊外型中心の「コスモス」「カワチ」「ゲンキー」の3社は「食品」に強みを持つことが分かる。また、現在経営統合の協議を進めているマツキヨとココカラの両社はとくに売上品目比率が似通っているといえる。
ドラッグストア大手各社の「食品」「化粧品」販売比率

大手ドラッグストア各社の「薬以外」の品目別売上。2017年各社決算による(決算期は企業により異なる)。

 もちろん、マツキヨなど「都心型中心」にカテゴライズしたドラッグストアが郊外に出店する例も少なくない。しかし、都心型中心のドラッグストアでは、郊外に進出する際にはスーパーマーケットや近隣型ショッピングセンターの準核テナントとして出店し、食品は「他企業に任せる」ことが比較的多いのに対し、郊外型中心のドラッグストアは「単独出店」が殆どだ。「郊外型」で急成長しているサンドラッグも、郊外大型店のダイレックス業態が出店できないエリアや従来型の都心店においてはスーパー内や商店街内に出店する例が多くみられる。  また、イオングループの2社(ツルハとウエルシア)は「バランス型」だ。両社は郊外型店舗が比較的多いものの、イオングループのスーパーマーケットと共同で出店している事例も多いことが「食品が突出」という結果にはならなかった一因であろう。
都市型系の出店事例

マツキヨなど「都心型中心」ドラッグストアの郊外店はスーパーマーケットや近隣型ショッピングセンターのテナントとして出店する事例が多い(大分県中津市)。

ツルハグループ

ツルハグループもイオン系スーパーとの共同出店や近隣出店が多い(札幌市)。

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食品の格安販売で集客する郊外型ドラッグストアの戦略
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