昔ながらのタイの「カフェ」。それは歌謡ショーありのレストランだった!

タイのカフェで歌う女性

時間帯は22時以降がおすすめで、それより早いと歌手がいない

タイで「カフェー」といえば……

 東南アジアの国々は多くがヨーロッパの列強による支配を受けてきた歴史がある。ベトナム、カンボジア、ラオスはフランス統治時代はインドシナと呼ばれ、地元住民には虐げられてきた歴史だったかもしれないが、今はその名残から、ベトナムならバインミーと呼ばれるサンドイッチやコーヒーなどがおいしく食べられる。フランスそのままのものではなく、ベトナムナイズされた味わいで、観光客にも人気だ。  一方、日本人から人気の観光国タイは植民地の経験のない国だ。そのためか、コーヒーはこの20年くらいで徐々に浸透し始めただけだし、パンもおいしい店はほとんどなかった。今でこそパン食も増えてきているタイだが、これは2000年以降に進出してきた日系のパン販売店、あるいは日本人職人の活躍が大きく貢献していると見る。  そんなタイでも昔からコーヒー豆の生産は少なくなかった。タイ南部で栽培され、多くがインスタントコーヒーの原材料にされる。近年は、タイ北部の少数山岳民族が所有していた大麻やケシの畑の代替作物としてコーヒーが植えられ、バンコクにもタイ産豆を使ったカフェが増えている。  ネットで検索すると、「インスタ映え」するとか「オシャレ」などという様々なスタイルのカフェが見られるが、タイ語で「カフェ」(正確にはカーフェー)と言うと、かつては、あるいは一部の人々にとってはまったく違ったスタイルの飲食店を指していた。タイ通の日本人にはあたかも「風俗店」のように認識している人もいるが、これがタイならではの飲食店として、かなり楽しめる店なのだ。  元来のスタイルを貫いている店はバンコクだともう残り少ないと言われるカフェに行ってみた。

歌謡ショー&レストランなタイの昔ながらの「カフェ」

 タイのカフェの歴史は諸説あるようで、東北地方が発祥という人もいれば、タイ全土に最初からあったという人もいる。  昔ながらのカフェのスタイルはステージのある飲食店で、歌謡ショーを観ながら食事をするというものだ。ステージ上の歌手たちは現金で作った花輪をチップ代わりに受け取り生計を立てている。客から花輪をもらうと、お礼の挨拶としてその客の席に歌手がやってくる。歌手は女性が多く、挨拶という建前がありつつ、同席して会話や食事を楽しむことから、傍目には日本でいうキャバクラのような印象を受け、風俗店のように思われる所以でもある。
現金でできた花輪

現金でできた花輪は最小100バーツからで上限はない

 しかし、歌手には男性もいるし、バンコクの外国人向けの売春バーやカラオケクラブと違い、店側は歌手や従業員の連れ出しを認めていない。閉店後にどういった関係になるかは客と歌手次第で、歌手たちもまた自身はあくまでも歌手であり、「そういう」前提では働いていない。
花輪をかけられる歌手

輪は店員がかけてくれるが、自分でかけてあげることもできる

 今回訪れた、バンコク都内のウドムスック通りにある「ザ・サン・カーフェー」も同じで、売春行為などをしていないからこそ、店内で写真を撮っても誰にも咎められることはない。売春バーならカメラを女性に向けようとした段階で男性店員らに暴行を受けることだってあるほどなので、カフェは風俗店ではないのだ。
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地元民の娯楽を満喫できるカフェ
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