photo by 多瑠都 / PIXTA(ピクスタ)
ICRP勧告アップデートに絡んで起きた「2つの動き」
ICRP(国際放射線防護委員会)が原発事故後の一般住民の被ばくを左右する重要な勧告をアップデート中である。この件について
前稿では、ICRP が更新された勧告の草稿を公開し、それを元にパブリックコメントを行っていることや、今回のアップデートでなされる重要な改定の一つについてお伝えした。
本稿では、前稿の公開と前後して日本国内から起こった
2つの目立った動きを紹介する。くわえて、今回更新される勧告の成り立ちを理解するのに役立つと思われる幾つかの情報を、チェルノブイリ原発事故からの年表形式で提供する。年表には関連資料へのリンクを貼り、一種の資料集としても使えるようにした。今回の勧告アップデートに関心を持っている読者には、ぜひ活用してみてほしい。
日本保健物理学会が会員に ICRP への意見投稿を呼びかける
日本保健物理学会は、放射線防護や被ばくの生物影響などを専門にする1000名以上の学者・研究者らから成る専門学会である。その日本保健物理学会が8月8日、会員たちに向け ICRP への意見投稿を呼びかけた。
同学会が公開した「
お知らせ」 によると
、“学会員の皆様からのご意見を募集・集約し、ICRPに意見発信”する、そして、
“ICRPの意見公募は各個人からでも提出可能ですが、学会から意見を送ることにより、より大きなインパクトで受け取ってもらえることを期待しています”とのことである。
便利なことに、同学会への意見投稿は
日本語でも受け付けられるそうである。おそらく、会員から送られた意見を学会内で集約した後、会員の中の本職の専門家たちが英訳するのだろう。この処置は、会員のうちで放射線防護を専門にしていない人たちにとっては特に有難いものだろう。
ところで、日本語での投稿を受け付けるのであれば、学会員だけではなく、一般の人たちからも意見を受け付けるようにしてみてはどうだろうか。そうした方がより広い角度からの意見が集まり、より有益なパブコメにできると思うのだが、可能だろうか…?
原子力市民委員会とは、脱原発社会を目指す研究者、技術者、法律家、原発事故被災者などから成る、日本の委員会組織である。福島第一原発事故の発生をきっかけに2013年4月に立ち上げられ、現在では約80名の構成員がいるとされる。
この委員会が8月9日、現在行われているアップデートとパブコメに関する3つの要望を ICRP に送ったと発表した。以下に示すように、それらの要望は至って真っ当かつ穏当なものである。
(1) 草稿の日本語版の提供
(2) 日本(少なくとも福島と東京)での関連ミーティングの開催
(3) パブコメの期間延長(今年末までか、それ以上に。※ 現在の締め切りは9月20日)
この3つのうち、「
日本語版の提供」にはかなりの労力と期間が必要になると思われるが、ぜひ実現させてほしいものである。日本語版があれば、勧告を読むことやコメントを投稿することへのハードルがぐっと下がるため、きっと日本から多くのコメントが寄せられるようになるだろう。福島第一原発事故の当事者である日本人から多くのコメントが寄せられることは、ICRP にとっても非常に有益なはずだ。