ホンダがアルゼンチンでの自動車生産から撤退決定。過去の栄光から逃れられないアルゼンチンの斜陽

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マクリ予備選大敗、そしてホンダの自動車部門撤退発表……

 8月11日に実施されたアルゼンチンの大統領予備選挙で現職のマウリシオ・マクリ大統領が対立候補として最も有力視されていたアルベルト・フェルナンデス候補の前に15%の大差で敗北するという事態が起きた。(参照:HBOL)その影響で、アルゼンチン経済がまた混迷の中に陥る可能性が生まれている。  今回の予備選への配慮からだったのか、ホンダが自動車部門の生産を2020年に閉鎖することを発表したのはその二日後の13日であった。一時的な中断ではなく完全に撤退することを決定したのである。この撤退はアルゼンチンのメディアでも重大ニュースとして報じられた。  撤退の理由はアルゼンチン国内経済の極度の不況と輸出で期待していたブラジルも景気が低迷しているからである。

決断は東京本社。解雇されるスタッフは?

 ホンダがアルゼンチンで販売を開始したのは1978年からである。そして、生産に関してはオートバイの生産を2006年から開始。その3年後の2009年から自動車の生産も始まった。  自動車部門の生産開始には当時大統領だったクリスチーナ・フェルナンデスがオープニング・セレモニーに出席した。彼女の任期満了に伴い彼女が支持したダニエル・シオリ候補を破って大統領になったマクリの政権下でホンダが撤退を決めるという両者の皮肉な組み合わせとなった。(参照:「Politica Argentina」)  今回の撤退の決定に当たって、アルゼンチン・ホンダの役員ディ・パルドはこの決定を下したのはアルゼンチン・ホンダではなく、東京本社であることを明らかにし、「ホンダは今後もアルゼンチンで存在し続け、政府や地方自治体とも今も良好な関係を維持している」と表明した。というのも、今回の撤退についてアルゼンチン政府も事情を理解し、解雇されることになる従業員の転職にも協力する姿勢を示しているからである。  現在、アルゼンチンのホンダでは1050名が働いているが、その内の400名が自動車部門で働いている。残り400名がオートバイ部門そして250名が管理行政部門である。自動車部門が撤退するということで400名が解雇されることになる。この転職先を見つけるのに生産・労働省はブエノスアイレス自治州政府並びに同業者や関連組合などと協力して新たな雇用先を探すことに協力する姿勢を示しているという。(参照:「La Nacion」)
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社内で噂されていた自動車部門のアルゼンチン撤退
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