ニングル / PIXTA(ピクスタ)
「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズでは、これまで一般ドライバーには分かってもらいにくい「トラックの死角」について何度か紹介してきたが、トラックには構造上、その死角以外にも「視界不良」を起こす要因が多くある。
歩行者や自転車はもちろん、一般車でもまともに衝突すれば無傷では済まない、「殺傷力」の高いトラック。
その危険性を知ってもらうためにも、今回は「トラックの視界の悪さ」と、トラックドライバーが一般ドライバーに強く望む「ライトの点灯」について述べていきたい。
トラックに死角が多くなるのは、過去記事「
一般ドライバーも歩行者も自転車も知るべき、トラック左後方の死角の危険性」などでも紹介しているが、死角に限らず、トラックには明瞭な視界が一般車より取りづらくなる要素がある。
とりわけ顕著なのが以下の2つだ。
1.湾曲したサイドミラー
できるだけ死角をなくすため、トラックのミラーには大きく湾曲しているものがある。これを「曲面ミラー」というのだが、視野がぐんと広がる反面、映り込む全てのものが小さく見えるため、後続車などとの「距離感」が掴みづらくなる。
2.エンジンの振動
日本のトラックは、ほとんどがエンジンの上に運転席があるため、走行中、ドライバーは一般車以上にその振動を受ける。ひと昔に比べれば乗り心地は大変良くなったが、車高が高いゆえに、道路に段差があるとやはり振動は一般車よりも大きくなり、ミラーなどもよく揺れるのだ。
トラックには後部に窓がない分、前方と真横以外の情報は、「
サイドミラー」に頼らざるを得ない。バックカメラを搭載しているトラックも多いが、捉えられる視界にはやはり限界がある。
このサイドミラーに対して、よく「大きいからよく見えるだろう」と思われるのだが、それは「見えないから大きくしている」のであり、実際のところは、こうした様々な構造の問題からトラックの視界は想像以上に悪くなることが多いのだ。
さらにこの時期なると、視界を不安定にさせる要素が増える。「雨」だ。
「
雨に濡れた窓」越しに見る「
雨に濡れた揺れる曲面サイドミラー」は、散り重なる水滴のせいで映っているはずの後続車を見事に消し去る。
さらに高速道路など、スピードが出る道路においては、前を走るクルマの水しぶきによって、前方の視界が悪くなるだけでなく、タイヤの数が多いトラックは、自らが走行中に出す水しぶきによって、サイドミラーに映る後方の視界をも真っ白にしてしまうのだ。
雨天時の検証写真。後続に白いクルマがいるのだが全く見えない
雨天時の検証写真。トラック車内から