まちゃー / PIXTA(ピクスタ)
デサントに対し伊藤忠が、廣済堂に対し旧村上ファンドが敵対的TOBを相次いで仕掛けた。今、再び敵対的買収が増え始めている。
アクティビストが狙うのは、割安に放置された“お買い得”企業
敵対的な買収やTOBが増加している理由として、「割安に放置されている企業があるから」ということが挙げられる。買収する側はいわゆる「モノを言う株主」であることが多いが、今、市場の話題になっているのは廣済堂と村上系ファンドだ。エコノミストの永濱利廣氏が解説する。
「廣済堂は中堅印刷会社ですが、同社の経営を支えるのは子会社の東京博善が手掛ける葬祭事業。営業利益は25億円で、廣済堂の連結営業利益の大半を占めています。四ツ木斎場や町屋斎場、落合斎場など東京都内7か所で葬儀施設を運営していて、東京23区内の死亡人口の7割以上の火葬を手がけているのです」
廣済堂の子会社、東京博善は斎場を多数運営。東京23区内の火葬の7割以上を手がける。高利益で廣済堂の収益源になっている。
廣済堂は1月17日、米投資ファンドのベインキャピタルが経営陣の賛成を得たうえで株式を買い集め、MBO(経営陣による企業買収)により上場廃止する計画を公表した。ところが創業家らが反対を表明すると、買収価格つり上げの思惑から株価が上昇。これを受けてベイン側は、買取価格を当初提示した610円から700円に引き上げた。
一件落着かに見えた3月20日には、村上世彰氏の影響が強いとされる投資ファンド、レノが参戦。1株750円で対抗TOBを仕掛けると、株価は一時860円まで上昇。TOBは5月10日締め切りの予定だが、株価は今もTOB価格を上回っていて、再度のTOB価格引き上げか、廣済堂とベインが当初計画したMBOのやり直しが予想される。
このような割安な企業をターゲットにするのは旧村上ファンドのほかにも、近年では香港に拠点を置くオアシス・マネジメントなどが代表的なアクティビストとして知られる。ある市場関係者は、「一昔前のアクティビストというと、短期的な利益を狙ういわゆる“ハゲタカファンド”のイメージがあるが、今は違う」と指摘する。