子どもが集めたものを勝手に捨てる、お年玉を取り上げる……厚労省が認めない「経済的虐待」の実態

 厚生労働省は、児童虐待を「身体的虐待」「性的虐待」「ネグレクト」「心理的虐待」の4種類に分類している。しかし実際には、子どもの持ち物を勝手に処分する、アルバイト代を勝手に使い込むといった「経済的虐待」も起きている。

高齢者虐待や障がい者虐待では認められている「経済的虐待」

 厚労省は4種類の虐待を、それぞれ次のように定義している。 ・身体的虐待:殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などより一室に拘束する など ・性的虐待:子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など ・ネグレクト:家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など ・心理的虐待:言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV) など  しかし、現実の虐待は、以上の4つに収まらない。  たとえば、高齢者虐待や障がい者虐待では認められているのに、子ども虐待にだけは認められていない虐待の種類がある。それは、経済的虐待だ。 ・高齢者虐待における経済的虐待厚労省の資料より):養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること ・障がい者虐待における経済的虐待厚労省の資料より):本人の同意なしに(あるいはだます等して)財産や年金、賃金を使ったり勝手に運用し、本人が希望する金銭の使用を理由なく制限すること。 【具体的な例】 ・年金や賃金を渡さない ・本人の同意なしに財産や預貯金を処分、運用する ・日常生活に必要な金銭を渡さない、使わせない ・本人の同意なしに年金等を管理して渡さない

子どもが集めた小説やレコードを勝手に処分するのも虐待

 このように自分の持ち物や貯金を身内に勝手に処分される虐待は、昔から親から子どもに対しても一方的に行われてきた。  作家の今東光(1898年-1977年)は文学を志した少年時代に、こつこつためた金で買った小説の本を母親に火鉢にくべられ、全部燃やされてしまった。1980年代に活躍したミュージシャンには、「高校時代にアナログ盤のレコードを買い集めていたら、目の前で父親に1枚、また1枚とバキバキに折られてしまった」と証言する人もいた。音楽好きなら、レコードが割られる痛みにわなわなと震えるだろう。  昔と違って現代は、子ども自身に相当の収入があるため、経済的虐待の被害状況の広がりは計りしれない。実際、1970年代と約50年後の現代を比べると、中高生のおこづかい額は2倍に増えている。中学生なら毎月1000円台から3000円弱へ、高校生なら3000円弱から6000円程度まで増え続けてきた。親や祖父母が子どもだった時代と比べて、少子化の現代では子どもは2倍のおこづかいを得ていることになる。  さらにお年玉の額になると、万単位になる。バンダイは、小学1年生から中学3年生の子どもを持つ親(子どもと一緒に回答できる方)900人を対象に、2018年1月5日~1月8日の期間、「小中学生のお年玉に関する意識調査」を実施した。その調査結果によると、小中学生のお年玉平均額は 24,424 円(小学生 21,382円、中学生 30,507円)。もらったお年玉の平均封数は、平均5.0封。約9割が祖父母からもらっていた。  お年玉の使い道の総合1位は2年連続で「貯金」だったが、「全額」を自由に使える子どもは全体の35.2%。約8人に1人が自由に使える金額を「0円」と回答したという。
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なぜ児童虐待では「経済的虐待」が認められないのか
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