呂布カルマと語るMCバトル盛衰史。“大人のマジ喧嘩”から”技の冴えを競うプロレス”へ<ダメリーマン成り上がり道#16>
即興で韻を踏みつつ繰り出される言葉の巧みさもさることながら、「大の大人がマジで口喧嘩している」という面白さもあるMCバトル。だがシーンの成熟により、トップクラスの出場者は大半が知り合い同士になりつつある。MC正社員の連載『ダメリーマン成り上がり道』の第16回は、前回に引き続きラッパー・呂布カルマとの対談。MCバトルのマンネリ化をどう防ぎ、面白いコンテンツにしていくのかを話し合う。
――前回の対談では、晋平太さんがUMBを連覇した’11年の頃から、名古屋でMCバトルの大会が少なくなり、呂布さんもバトルにあまり出なくなったという話がありました。その後、またバトルに多く出るようになったのはなぜなのでしょう?
呂布カルマ(以下、呂布):「僕はMCバトルから意識的に離れたわけでも戻ったわけでもないですね。自分からはバトルに出ないで、『ライブもあるなら出ます』というスタンスでずっとやっているんで。多く出るようになったのは、呼ばれる機会が増えた、需要が増えたということだと思います」
――過去のインタビューでは『賞金を稼ぐために出ていた』とも仰っていました。
呂布:「そうですね。でも今は、自分が出て賞金を稼いで、自己顕示欲を満たすみたいなことは正直足りたというか。そこはもう越えました。だから正直、戦うモチベーションもないんですよ。だからチーム戦で勝敗を争うときや、『フリースタイルダンジョン』の『般若さんを守るために戦う』みたいな理由があるときのほうが本気になれます」
――戦極MCBATTLEがトーナメントのシステムを工夫したりしているのも、そうやって出場者のモチベーションを保つ意図もあるわけですね。
MC正社員(以下、正社員):「それはあるっすね。今年3月開催の19章(『戦極MCBATLLE 第19章 King Of Fantsista 3on3』)を3on3形式のバトルにしたのもそのためです。呂布さんもTwitterで前に書いてましたけど、バトルに出続けてきた人は、もう本気でキレられる相手なんていないんですよ。強いMCは年代も一緒くらいで、仲のいい人も増えちゃったから。その点で、名前も実力もあるMCを集めるだけの大会は難しい時期にきていると思います。今では10代の無名のコが出ているフリーのイベントのほうが、「こいつブチ殺して絶対優勝してやる」みたいな熱があって、バチバチやり合う面白さがあったりしますから。呂布さんも、何度も対戦しているふぁんくやNAIKAさんや晋平さんとかには『頑張れ』くらいしか言うことないですよね?」
呂布:「ないですね」
正社員:「あと『奥さん大事にな』とか(笑)」
呂布:「口喧嘩の要素はMCバトルからどんどんなくなっていきますね。MCバトルには大の大人が本気でののしり合っているという面白さがあると思うんですけど、それは難しくなりつつある」
正社員:「相手が10代のイケイケのヤツで、『おい呂布、ブチ殺してやるぞ』って言われたら、呂布さんも言い返すだろうし、そういう相手には絶対負けたくなくてやり返すモードになりますよね。だから戦極も上を倒して有名になりたいと思っている若手に出てもらったり、関係性の薄い人同士をぶつけたりして、全員が本気になれる大会にしたいと最近は心がけています。そのへんを考えてやらないと、大きい大会の主催者は結大変だと思いますよ」
呂布:「真剣勝負からプロレスになりつつあるというかね。両方の手の内がわかったうえで技を出し合い、受け合って、どっちの技が冴えていたかを勝負するみたいな。本当の口喧嘩的な熱さは出せなくなっても、面白く見せる方法はまだあるなとも思います」
ベテランMCはマジギレできる相手がいない
“口喧嘩”の要素は希薄に
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