内定辞退をするときは直接訪問? 学生の声は「必要がない」「ハラスメントされた学生も」

 日本経済新聞は5月15日、「内定辞退の正しい伝え方、『直接会って、まず感謝』を」という記事を公開した。内定を辞退するときは、担当者に直接会って、感謝を伝えるべきだという趣旨の記事だ。  公開直後から大きな話題となり、インターネット上では反発の声が相次いだ。昨年、就職活動を終えた新社会人たちからも「そんなことをする必要があるのか」という疑問の声が上がっている。

内定を辞退するときは企業に足を運び、感謝を伝える?

 記事では、学習院大学が4月に学生向けに開いた「内定獲得後のマナーセミナー」の内容を紹介している。同大キャリアセンターの担当事務長によると、内定を辞退する場合は、「メールの送りっぱなしや電話で完結してはダメ。必ずその企業に足を運ぶことが重要」だという。人事の担当者に連絡を取って、直接会うべきだというのだ。  そして担当者と実際に会ったときは「内定をくれたことへの感謝を、いの一番に伝えること」としている。キャリアセンター担当事務長の発言を紹介した後、企業報道部の鈴木洋介記者は、記事をこう締めくくっている。 「就活はよく結婚に例えられる。内定がプロポーズなら、内定の承諾は婚約を交わすようなものだ。いわば婚約者に対し、間違っても『黙ってフェードアウト』『卒業ギリギリに断る』といった不誠実な対応はすべきでない」

「インターンで半年くらいお世話になっていたならともかく……」

 昨年まで就職活動をしていた新社会人たちは、この“珍マナー”をどう見ているのか。マスコミで働く男性は、この記事を読んで「馬鹿だなと思いました」と話す。 「僕も就職活動中に内定を辞退したことがありますが、電話で済ませました。きちんと丁寧に対応すれば電話でも構わないのではないでしょうか。例えばインターンで半年もお世話になっていたならともかく、面接で3回会っただけの担当者にわざわざ会いにいくでしょうか。企業も不採用の場合にはメールで済ませていますし、学生だけなぜわざわざ会いに行かなければならないのでしょう」  企業は、就活中の学生が不採用になった場合、メールだけで連絡することが多い。いわゆる「お祈りメール」だ。中には、通過者だけに連絡し、不採用の学生には連絡をしない企業すらある。お祈りメールすら来ないため「サイレントお祈り」と呼ばれている。それにもかかわらず、なぜ学生だけはわざわざ足を運ばなければならないのかと疑問に思うのも無理はない。
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訪問先で「うちにしろ」と圧力を掛けられる学生も
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