東京都・横田基地に後方司令部を持つ、知られざる「朝鮮国連軍」の存在
朝鮮国連軍の後方司令部のある横田基地には、日本と米国の旗だけでなく国連の旗も立てられている
日本と協定を結び、軍事的な活動拠点としているのは、実は米軍だけではない。朝鮮半島有事に対応する「朝鮮国連軍」は、その後方司令部を横田基地(東京都)に置き、その航空機や艦艇が日本に出入りしているのだ。
これは、多くの日本人に知られていない。朝鮮国連軍の動向は、日本の人々の生命や安全にも大きく関わりうるにもかかわらず、政府は同軍についての情報開示に後ろ向きだ。
現在は南北融和ムードではあるが、いざ「朝鮮半島に有事」という場合に対応する「朝鮮国連軍」は、その後方司令部を横田基地(東京都)に置いている。『東京新聞』論説兼編集委員の半田滋氏はこう解説する。
「1950年に始まった朝鮮戦争勃発に伴う国連安保理決議に基づき、米国を中心に朝鮮国連軍が編制されました。当初は、米軍占領下の東京にその司令部が置かれました。1957年に司令部は韓国のソウルに移転しましたが、現在も横田基地に後方司令部があり、米国のほかにオーストラリア、カナダ、フランスなど12か国が参加。全国7か所の在日米軍基地を拠点としています。『国連軍』を名乗っていますが、実質的には米軍を中心とする多国籍軍です」
韓国と北朝鮮の軍事境界線である板門店で警備を行う朝鮮国連軍兵士(手前)。すぐ近くに北朝鮮兵士が対峙する(奥)
その朝鮮国連軍が大きな動きを見せたのが2017年のことだった。
「外務省に問い合わせたところ、朝鮮国連軍艦艇の来日は2014~2016年には1~2隻だったのが、2017年には14隻と急増しました。当時は米国と北朝鮮が激しく対立していたため、おそらく朝鮮国連軍が動きを活発化させていたのだと思われます。
しかし、外務省に問い合わせても回答なし。カナダの潜水艦が北朝鮮の密輸を取り締まるため日本海に来ていたことも、私はカナダの新聞で知りました。日米地位協定では、在日米軍が軍事行動を起こす際、日本に事前通告する必要がありますが、朝鮮国連軍地位協定ではその義務がありません。
北朝鮮有事の際、在日米軍は『朝鮮国連軍』として行動するなど、立場を使い分ける可能性があります。日本人が知らぬ間に戦争に巻き込まれることもあり得るのです。北朝鮮にとっては、米軍等の出撃地となる日本は自動的に攻撃の対象となりますので」