PDCAの弊害よさらば! 2019年はOODAループ元年に!

プレゼン「このOODAループはPDCA(Plan,Do,Check,Action)サイクルとは対極的なものであり、両者の使い分けとバランスが大事であるにもかかわらず、実務ではPDCAサイクルが偏重される傾向が強い。特に、PDCAサイクルのなかで計画(Plan)が重視され、そこに時間をかけるあまり、適切なタイミングを逸するという弊害も見られる。(略)  あらゆる状況でPDCAサイクルを回すということには反対である。たとえば、不確実性が高く、データもあまりない状況で果たしてどれだけ意味のある計画を立てることができるだろうか」  これは現在ベストセラーになっている、チェット・リチャーズ著 原田勉訳『OODA LOOP(ウーダループ)』(東洋経済新報社)の訳者解説部分(「いま、なぜOODAループなのか」)である。

ベストセラーの理由は、計画(P)ばかりが重視されることへの危機感か

 OODAループとは、アメリカ空軍大佐ジョン・ボイド氏が開発したあらゆる分野で適用できる戦略一般理論。みる(Observe=観察)、わかる(Orient=情勢判断)、きめる(Decide =意思決定)、うごく(Act=行動)、みなおす/みこす(Loop)の頭文字からとっている。朝鮮戦争(1950~1953年)の空中戦で、ボイド大佐率いる味方1機が敵機10機を撃墜したとされる戦果の研究が原点となっている。  今回の著者チェット・リチャーズ氏は数学博士で経営コンサルタント、ジョン・ボイド氏の同僚にあたる人物だ。ボイド戦略理論は軍事に特化したものだったが、その基本的な洞察はビジネスだけではなくあらゆる人間の努力に適用することができると、同僚のチェット・リチャーズ氏が執筆したものが今回の『OODA LOOP(ウーダループ)』だ。  ビジネス上の「OODAループ」のキーワードはアジリティ、「迅速かつ容易に移動し適応する能力」を持つことだ。「顧客に密着して彼らのニーズや欲求を迅速に発見し、それに対応することができる」。それは暗黙的に以心伝心で行われる組織文化が望ましい。「OODAループ」を高速で回すアジリティの高さが求められているのだ。 『OODA LOOP(ウーダループ)』の原著自体は2004年に発刊されたもので、15年後の日本で出版されるのは、冒頭で紹介したように、PDCAサイクルとそのP(計画)ばかりが重視されて、アジリティに欠ける経営が行われている危機感からだという。  なお訳者の原田勉氏は神戸大学大学院経営学研究科教授である。ベストセラーになっているのは同種の危機感を抱いている読者が多いためだろう。
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PDCAの呪縛から解き放たれろ
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