原油供給不安による高騰から一転下落……も、喜べない事情

イランのロウハニ大統領

11月5日、米国の原油禁輸制裁発動に対して、イランのロウハニ大統領は「違法で不当な制裁を堂々と無視する」と宣言。中東の地政学リスクが燻っている……  写真/Avalon/時事通信フォト AFP=時事

原油急落後しばらくしてから下落したガソリン価格はどうなるか

 原油価格が高騰し、10月3日にはNY原油が4年ぶりに高値を更新する1バレル=76.9ドルを記録した。背景にあるのは、供給不安だ。米国はイラン産原油の禁輸制裁を発動中だが、制裁を表明した8月から原油価格は上昇。さらに同時期、ジャーナリスト暗殺にサウジアラビアが関与していた疑惑が発覚。国際社会の袋叩きに遭ったサウジは反発し、「石油を政治的武器に使う」と仄めかしたことで、オイルショックの再来となる“サウジ・ショック”が懸念されている……。  だが、トーキョー・トレーダーズ・タイムズの小針秀夫代表は懐疑的だ。 「確かに、中東の地政学的リスクの影響はあったが、高騰の主要因はあくまでも供給不安です。また、10月に大型ハリケーンが、石油関連施設が集中する米国メキシコ湾岸を襲い、足下の供給懸念も追い打ちをかけた。だが、原油の高騰を受けて、サウジなどのOPEC諸国やロシアまでがこぞって増産をはじめた結果、原油は急落しました」  実際、NY原油は高値更新から1か月で20%超も下落。当初、国内ガソリン価格は1リットル=160円(全国平均)と高止まりしたままであったが、現在は148円まで下落した。 「湾岸諸国から日本にタンカーが到着するのに約20日、ガソリンに精製するのにさらに日数を要します。急落した原油と同様に(現在は)2割ほど値を下げました。原油が下落したのは、世界経済を牽引してきた中国の成長が止まり、需要が減った影響も大きい……。原油価格の動向と合わせ、世界経済に及ぼす影響が遥かに大きい中国の行く末についても心配です」  値下げを喜んでばかりはいられない。 取材・文/斎藤武宏