小中学生の観客も訪れるMCバトル。大規模イベントを盛り上げる秘訣~「ダメリーマン成り上がり道」#10

 ライブをはじめとした音楽に関連したイベントは、規模が小さいうちは観客も知人や身内ばかり。それが人気が出てくると、段々と知らない人が増えはじめ、当初は想定していなかった客層も訪れるようになる。MC正社員の連載『ダメリーマン成り上がり道』の第10回は、彼の主催する「戦極MCBATTLE」を題材に、2500人規模のイベントを盛り上げる秘訣について解説する。

猛反対されたスクリーンの設置

2500人規模のイベントでは、これまで想像しなかった課題も浮き彫りとなった

 イベントの規模が大きくなり、客層も変化すれば、会場を盛り上げるためには新たな工夫が必要となってくる。  8月に Zeepダイバーシティ東京で開催された「戦極MCBATTLE 第18章 -The Day of Revolution Tour-」は、「過去最高の面白さ」とMC正社員も断言する内容となった。  約2500人の観客が一体となって盛り上がり、決勝ラウンドの模様を収録したDVDのAmazonレビューにも「過去最高!」「頭っからケツまでベストバウトよく味わえ」といったコメントが並んでいる。こういった成果についてMC正社員は、「17章の反省を活かせたことが大きかった」と振り返る。 「17章からの変化のひとつは、会場内にバトルの映像を映すスクリーンを設置したこと。これは17章について、『会場後方の人はバトルの様子が全然見えなかった』と、ツイッターに書いている観客を見つけたのがきっかけでした。その人に話を聞いてみると、お客さんには小学生や中学生もいたみたいで、彼らはステージの様子は見えていなかったと。『チケットは4000円もするし、DVDを2本買ったほうがよかった』みたいに言っているコもいたらしいんです」  このような事態は、大会の規模が小さなときには想像できなかったそう。たしかに、小・中学生までもが見に来ることを想定することは、なかなか難しいかもしれない。 「1300人くらい入るハコまでは、いいバトルを見せられれば、お客さんが勝手に盛り上がってくれる感じがあったんです。でも2000人とか2500人の規模になると、MCバトルを初めて見るようなお客さんの割合も増えてくる。小学生や中学生が見に来るなんて、俺も想定してなかったことだし、これまでと同じやり方では盛り上がれない人や、不満を感じる人も増えてくるんだろうなと思いました」

ラッパーたちの熱意を会場全域に伝えるには、主催者の工夫が必要だ

 なお、スクリーンの設置には巨額の費用が必要とのことで、周囲からは大反対されたという。普段、我々がライブ会場などで何気なく観ているスクリーンだが、その裏にも主催者ならではの葛藤があったのだ。 「18章で会場全体が盛り上がった雰囲気を作れたのは、スクリーンがあったからだと思います。実はスクリーンの設置には、もうひとつ17章からの反省があって。17章では、のちに大麻取締法違反で逮捕されて話題になるAmaterasがある事件を起こしていました。Battle手裏剣というラッパーとのバトルで、彼は『韻』と書かれたパネルを持ってきて、ラップをせずにその上で縄跳びをする……という行動に出たんです」  文字通りに「韻を踏む」というパフォーマンスを行ったわけだ。結果、対戦相手のBattle手裏剣は怒ってラップをせず、試合はノーコンテストで両者敗退となった。 「ネット上では話題になったんですけど、会場では『後ろの方の人は何がなんだかわからなかった』という声もあったんです。それも、要するにパフォーマンスの様子が見えないから。会場で映像が観られる状況なら、反応は違ったと思ったんですよね」
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出演者のメンタルを保つための工夫も
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