韓国で皮下注射の痩せ薬が大ヒット。誤った乱用が相次ぎ社会問題に

サクセンダの公式サイト

ダイエット薬が韓国で社会問題に

 今、「サクセンダ」(一般名=リラグルチド)というダイエット薬が韓国で話題になっている。  ノボノルディスクファーマ社が発売する、食欲を抑制し満腹感を与える事によりカロリー等の摂取を抑制する次世代の減量薬だ。日本ではまだ発売されていない。  減量薬と言えば、過去にはその副作用が大きなニュースになった事から抵抗感がある人も少なからずいるだろう。  2009年に米製薬大手ファイザーに買収されたワイスが、1997年自社が販売する肥満治療薬「フェンフェン」と、患者の心臓弁の損傷に関連性が認められたことから、その混合薬の成分の1つについて使用を中止された。  また2010年には、米製薬会社アボット・ラボラトリーズが、自社調査において心臓発作や麻痺の危険性が高まることが示されたとして、肥満治療薬「メリディア」を市場から引き揚げた。  韓国で爆発的なヒットとなっている「サクセンダ」に、そのような副作用はないのであろうか。またその効果は本当なのだろうか。

皮下注射への忌避感も予想されたが大ヒット

「サクセンダ」はデンマークの製薬会社ノボ・ノルディスク製の肥満治療薬である。  既存の他の薬剤と「サクセンダ(リラグルチド3.0mg)」との相違点は、多様な臨床研究結果を持っているという点だ。  肥満患者の大多数が糖尿病予備群である。「サクセンダ」は糖尿病予備群から糖尿病になるのを予防してくれて、また正常血糖に回復してくれる効果もある。またリラグルチドを利用した心血管系安定性の研究でも心血管系疾患の予防効果まで確認された。これは過去の肥満治療薬が心血管系の副作用により市場から引き揚げた事を考えるととても大きな長点だ。  長期投薬の安全性も数多くの臨床試験によって確認されている。 「サクセンダ」の副作用は、吐き気をもよおすことだ。この吐き気は、患者の約40.9%から報告されている。しかしこの副作用の吐き気も投薬後8週以内に薬剤が体内に適応して徐々に収まっていくとされている。  韓国では、今年3月に「サクセンダ」が国内で初めて販売されて以降、半年もたたないうちに品切れ状態になった。よってオンライン中古市場では使用済みの注射剤が違法取引されている。医学専門誌ではない大衆媒体には、広告はもちろん報道資料さえ容易に載せる事が出来ない専門医薬品がどうしてこのような非正常的な流通経路で人気を博しているのか。 「サクセンダ」は、1日に一回づつ、3か月以上長くて1年間持続的に、直接皮下脂肪の多い腹部(または太ももや二の腕)に患者自身が注射を打たなければならない。  糖尿病治療のために打つインシュリン注射も患者の立場からしたら拒否感が大きい。このような理由から製薬業界では、価格はさて置き、毎日注射を打たなければならない肥満治療剤が韓国市場でどの程度受け入れられるか懐疑的であった。  しかし、これまでネット上に掲載されている口コミだけ見ても、抵抗感はおろか1999年に勃起不全治療剤の「バイアグラ」が韓国国内で紹介された時に次ぐ人気だ。  最初は医師、次にトレンドに敏感な美容業界とカンナム地域を経て、今では韓国国内全体にその人気は拡散している。
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誤用・濫用で社会問題に
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