社是は「老舗にあって老舗にあらず」。 小田原の老舗「鈴廣かまぼこ」が、太陽光発電や森林整備をする理由
「鈴廣かまぼこ」の創業は、慶応元年(1865年)にさかのぼる。レストランやかまぼこ博物館などが併設された「鈴廣かまぼこの里」は、バスツアーの休憩処や箱根駅伝の中継地としても有名だ。
「老舗にあって老舗にあらず」。この一見相反する言葉が、「鈴廣」の社是だという。それはどういう意味なのか? 鈴廣かまぼこの鈴木悌介副社長に話をうかがった。
鈴木副社長:この「老舗にあって老舗にあらず」という言葉は、私の祖父である6代目鈴木廣吉が残したものです。「老舗」という言葉は外部の人に言われる言葉であって、本来は自分たちで使う言葉ではありません。
しかし「社是」というもの外に向かって発信するものではなく、働く人たちが自分たちの立ち位置を常に考えるためのものですので、あえて「老舗」という言葉を使わせてもらっています。
「老舗にあって」というのは、時代がどんなに変わっても変えてはならないことを指します。私たちが150年間かまぼこを作り続けられたのは、「鈴廣のかまぼこを食べたいな」と思って、実際にお金を出して商品を買ってくださるお客様がいたから。そのお客様を真正面に見て仕事をするという姿勢は、ずっと変えてはならないものだと思っています。
そして「老舗にあらず」というのは、「変えなくてはならないことは、勇気を持って変えていく」という姿勢です。世の中はどんどん変わっていきます。お客様の食生活もライフスタイルも、自然環境も科学技術も。それらに合わせて、仕事の仕方を変えていくことが求められています。
例えばかまぼこ作りにおいても、最先端の技術を導入し、理論を科学的に分析しながら仕事の仕方を変えてきています。伝統技術を科学し、そこで調べた情報を職人へフィードバックするのです。
いままでは、鍛錬を重ねて「感覚」で少しずつ技術を習得していました。自分で試行錯誤しつつ、先輩職人の技術を「見て盗む」という習得の仕方ですね。一方、分析した情報をフィードバックしていけば、若い職人の技術の習得が格段に早くなります。私たちは、これらの試みを「伝統を科学する」と呼んでいます。
「老舗であること」「老舗であらざること」、この2つを50%ずつでやるのではなく、どちらも100%でやっていく。この2つが、我々の行動の指針です。大切なものを守っていくために、変わっていかなければならないのです。
網元漁商を営むかたわら副業としてかまぼこ製造を始めたという、神奈川県小田原市の老舗
変えなくてはならないことは、勇気を持って変えていく
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