落ち武者の祟りの裏にあった秘密とは……?
「では、物件を案内してもらっていいですか?」
「私達は入れないんですよ。もうしばらく入っていないんです」
「なにか理由でも?」
「出るんです……落ち武者の霊が。しかも4人も……」
今回、担当した物件はかなり年季の入った大きめの店舗住宅だった。
最寄り駅は遥か彼方で県道から細道を入った突き当りという立地だが、作業車が5~6台停められるほど広い駐車場が取られている。1階部分は作業場と従業員休憩室になっており、外階段で上がる2階が宿舎になっているというつくり。
この物件の難点は水路沿いということで湿気が酷いのだが、さらに室内と室外の2箇所に井戸が掘られており、玄関先には池があるため、なかなか体感したことのない湿度となっていた。
そのため木材の痛みが激しいだけでなく、蚊をはじめとする大量の虫が発生しており正直、落ち武者にかまっているヒマがないほど難航した調査となった。
1階の調査後、一旦休憩を挟むことになったため、債務者に落ち武者の霊(×4)について話を聞いてみることに。
「元々、この物件を買われたときから落ち武者の霊は出るんですか?」
「いいえ。業績が落ち始めたのと、落ち武者の出現時期が同じだったので祟りかと。その影響で従業員も住んでいられないと次々に全員出ていってしまいまして……」
「落ち武者の霊は井戸から出てきたりするんですか?」
「いいえ。井戸は2つとも新しいので。」
「元々ここは戦国時代に戦場だったり、何かいわれがあるんですか?」
「いいえ。元々ここは川だったそうです。」
「実際に落ち武者の霊(×4)に会われたことはあるんですか?」
「いいえ。私達家族は見たことがないんです。変な音くらいは聞いたことがありますけど。特に悪さをするでもないんです」
特に悪さをしないなら放っておいても良いのではと思いはしたが、2階の調査を開始することにした。