長雨による売り上げ損失対策は、会議よりも居眠りがいい
俺が今年3月末まで経営していたオーガニックバーの店名は「たまにはTSUKIでも眺めましょ」。サラリーマンとして苦悩した経験から、働きすぎている人や「働かなきゃ」と思っている人に向けて、「月を眺めるような自分と時間を取り戻して人間らしく暮らそうよ!」との想いを込めてつけた名前だ。
この場所で多くの来店者が、「より」「もっと」お金がなければ生きて行けない、という強迫観念から解脱していった。それは酒を飲んで理想論を語り合ったからではない。俺自身がこの店を通じて、金はほどほどなのに、楽しく豊かに飄々としている姿を見せてきたからだ。
「必要以上は儲けない」「より働かない」。開業から閉業間際までの14年間、ずっとそう決めて歩んできた。だから当店の売り上げは一貫して月に50万~70万円くらい、平均60万円前後をキープするよう心がけた。
閑散期の2月や8月は50万円を切ることがあったが、気にしなかった。これは、単なる人の気分の問題だからだ。雨が続いて売り上げが落ちることもある。こういう時、世間の企業では対策会議や戦略会議を開くのだろうが、会議をしたからといって雨雲を消せるわけではない。時が過ぎるのを待つしかない。
毎月決まった給料を出さねばならない“The 会社”システムの傘下にいると、売り上げを確保するために訳のわからないマヌケな努力を強いられる。売り上げがいい季節もあるし、晴れが続くこともあるのだから、無理に平準を高くキープしようと悪アガキするなんてカッチョ悪い。
お客さんがいなきゃ「これ幸い!」と、居眠りをしたり読書したりすればいい。こんな楽なことはない。逆に100万円近くの売り上げで嬉しいこともあったが、それはそれで忙しくて疲れるし、体中が凝りまくる。そこで、売り上げを減らす工夫をして60万円前後に落とした。
飲食店においては固定費・変動費・人件費が1/3ずつと言われる。一人ぼっちで営む店だから、人件費ってやつが俺の給料となる。ざっくりと言えば、俺は年間ずっと、月に17万~25万円くらいの収入だったわけだ。歳を重ねて上がるわけでもなく、下がるわけでもなく。
「これでは都会で暮らせないのでは!?」という声も聞こえてきそうだが、消費に踊らされず、自分で作れるモノやできるコトを増やしていけば人並みに、いや場合によっては人並み以上に、粋にオシャレに暮らせる。