写真/時事通信社
例えば1時間きっかりの昼休み。オフィスから出て昼飯を食う店に辿り着いたら行列ができている。並ぶ時間とオフィスに戻る時間を考えれば、食べる時間は実質45分あるかないか……。こんな経験は誰しもあるだろう。
ここまでなら我慢できるかもしれない。しかし、その45分を同僚や店の前に並ぶ他の客と分け合うのならどうだろう。例えば3人で分けるのなら1人頭15分しかない。5人で分ければ9分だ。さらには例えば5人で分けて1人頭9分の持ち時間、必死になって箸を動かし与えられた時間できっちり食事をしようとしているのに、店側の段取りが悪く料理がなかなか出てこなかったり、あるいは店側の人間が余計なことを話しかけてきたらどうだろうか? 誰だって大きな声で「いい加減にしてくれ!」と叫びだすに違いない。
過日行われた、国会での党首討論を野党党首たちの目線から見ればさしずめこんな感じだ。本来であればしっかりと時間をとって腰を据えて議論をしたい。しかし議事進行の時間割を決める与党側は野党全体に45分しか与えない。その45分を野党全体で分ける必要がある。議席数比例で割り与えられた持ち時間は4分から7分と限られたもの。そのなかで精いっぱいの議論を持ちかけたら、与党側の代表つまり自民党の総裁であり我が国の内閣総理大臣である安倍晋三は聞かれたことに答えず、意味不明の答弁を繰り返すばかり。野党各党党首の態度をあれこれする前に「よくぞ怒鳴らなかったな。よく我慢した」と褒めてやるのが適当だろう。
党首討論での安倍晋三の戦略は「聞かれたことに答えない」と「徹底的に相手をバカにする」で終始していた。
例えば共産党の志位和夫委員長が「加計学園の言い分を信ずれば、加計学園は勝手に首相の名前を使って愛媛県を騙したことになる。名前を使われた立場として本件をどう認識するのか?」と尋ねれば「私は愛媛県に働きかけたことはない」と答える。例えば無所属の会の岡田克也代表が「財務省報告書を見れば、『私や私の妻が関与していたら総理も議員も辞める』という総理答弁が、森友文書改ざんの契機だった。良心は痛まないか?」と尋ねれば「私が国有地売買を働きかけたわけではない」と答える……。問いと答えが食い違っており、お話にならない。そのくせ長々と同じ話を繰り返し、ただでさえ限られた野党側の時間を空費する。これでは党首討論の意味なんて一切ないではないか。