「50代社員の不良在庫化」の背景

やれ、「ゆとり世代はガッツがない」「バブル世代はお調子者で仕事ができない」「団塊世代はもらうだけもらった逃げ切り世代」……。とまあ、世代間のディスり合いは常に不毛なものだが、実は今、こっそり会社でお荷物となり疎まれているのが「50代」だという。 50代社員の不良在庫化 50代不良在庫社員 なぜ今、「不良在庫」化した50代社員の問題が顕在化しているのか? その背景について、キャリアコンサルタントの植田寿乃氏、弁護士で国際経営コンサルタントの植田統氏ともに、年功序列制度の揺らぎにあると指摘する。 「アメリカでは社長が40代で、50代社員が文書入力などの単純作業に従事する例も当たり前ですが、日本では年長者にそういう仕事はさせにくい空気がある。だから『担当部長』のようなよくわからない肩書を与え、仕事もさせず高給を払い続けてしまう。特に大企業にはまだ終身雇用が残っているのですから、社員がしがみつくのも当然ですよ」(植田統氏) 「年功序列は、会社に忠誠を誓い、部下は鍛えて使うという軍隊型の組織。それ自体が、崩れつつあるのに、その価値観で生きてきた50代はポジションが上がること=エラくなるという意識ができている。でも、管理職はただの役割。学級委員やマンションの理事長みたいなのもので、役割があるときがあれば、終わるときもあるという発想ができないでいる」(植田寿乃氏)  一度、年功序列というエスカレーターに乗れば、ゴールまで行けると信じて疑わなかった50代にしてみたら、ここ数年の企業をめぐる変化は突然、はしごを外されたようなもの。その困惑はわからないでもないが、「男性は変化を恐れすぎる」と植田寿乃氏は続ける。 「女性はいくつになってもいい化粧品を見つけたら飛びつくし、髪形も気軽に変える。でも、男性の中には10年以上、髪形を変えていない人も少なくない(笑)。ただでさえ年を重ねて柔軟性がなくなるなか、仕事上で変化を迫られると、人生観を否定されたかのように感じてしまう人もいる」  加えて、年功序列制度は長く日本のスタンダードであったために、そうでない生き方を示すロールモデルがないという不幸もある。  役職定年で給与や立場が激変する衝撃たるや、いかほどのものか。  例えば、想像してもらいたい。これは、ある上場企業の話だ。 「ウチの会社は○○課長、○○部長と社員を役職をつけて呼ぶのが慣習なんです。で、役職定年になった社員は、その日から『エルダーさん』って呼ばれるんです。机の位置も一番の下座に移動させられ、任される仕事は明らかな雑用。役職や仕事ばかりか、名前すらない存在になるんです」(32歳・男)  ヘタなホラーよりも恐ろしい話だが、そうならないためにはどうすればいいのか。 ⇒【後編】『45歳が分岐点!? 50代で会社のお荷物にならないために』に続く 【植田寿乃氏】 キャリアコンサルタント、ダイバーシティコンサルタント。モチベーションリーダーシップやメンター育成に取り組み、セミナー回数は年間200日に上る。新刊に『女性活躍推進』 【植田 統氏】 弁護士、国際経営コンサルタント。外資系経営コンサルティング会社、法律データベース会社代表を経て、54歳で弁護士として独立。新刊に『45歳から5億円を稼ぐ勉強法』 イラスト/マスリラ