東松山市長選に立候補した女性装の東大教授、安冨歩氏の奇抜な街宣の背後にある実直な主張

東松山市長選に立候補した東大教授の安冨歩氏

 女性装の東大教授ということで、そのビジュアルばかりに注目が集まる東松山市長選に立候補している安冨歩さんですが、街頭演説で訴えていることは、現代の日本が抱えている問題点をものすごくストレートに訴えるものでした。「子供を守る」は、東松山市の市政はもちろん、どちらかと言うと、日本全国で取り入れられるべき話ではないかと思います。この演説の隣でドラムやピアニカ、木琴などを演奏していることは気になりましたが、この奇抜さこそが安冨歩さんのキャラクターでもあるので、ただ真面目に演説すれば良いというものでもなさそうです。なので、このまま戦って1票でも積むにはどうしたらいいかを考えてみることにしました。

安冨歩さんの戦い方にモヤモヤしている人がいる現実

 安冨歩さんの選挙は、あまりに奇抜で、従来の選挙の形とは大きく異なります。チンドン屋さんを引き連れて街を練り歩いたり、馬に乗って街を歩いたり、街頭演説の内容も「私に1票入れてください」と訴えるようなものではなく、まるで大学の講義を聴いているかのようです。なので、このままでは勝てるものも勝てないのではないかと心配になり、従来通りの選挙の形を望む人も少なくないと思うのです。  しかし、それをやってしまったら安冨歩さんの個性は死んでしまうし、子どもたちの個性を尊重して伸び伸びと過ごすことが大人になった時に自由で幸せな人生を生きるための礎だと主張しているのに、安冨歩さんに型にハマった選挙を強要するなんて大きな矛盾です。従来通りのつまらない選挙をやりたいのであれば、頑張って他の人を擁立すればよかったわけで、選挙が始まってから「こんなはずじゃない!」と言っても始まらないので、戦略としては安冨歩さんの個性を最大限に発揮し、1人でも多く伝えるために特化することを考えるしかないのではないかというのが、僕が考えるところです。

東松山市長選で「勝つ」ということを忘れて戦った方がいい

 安冨歩さんを応援している人たちにこんなことを言うのは酷なのかもしれませんが、せっかく立候補してくれた安冨歩さんの魅力を最大限に引き出すためには「勝つ」ということを一旦忘れた方がいいのではないかと思います。  これは「負けてもいいじゃないか」と言いたいわけではありません。選挙をやっている以上、勝つことを目指して戦うのは当然なので、「立候補することに意義がある」と言いたいわけでもありません。  ただ、選挙には今回の東松山市長選に勝つか負けるか以外に、もう一つ、とても重要なことがあるのです。それは「選挙は無限にある」ということです。選挙というのは4年後もあるし、8年後もあるし、しっかりと民主主義が保たれていれば、100年後も200年後も存在するものです。もっと言えば、日本全国で毎週のように選挙が行われているわけで、日本全国すべての自治体で選挙は必ず行われています。安冨歩さんが東松山市で立候補して訴えたことは、2018年の東松山市長選のみで完結して終わるのではなく、これから行われる日本全国の「未来の選挙」すべてに影響を与える可能性があるということです。つまり、東松山市から小さな小さなムーブメントが起こり、それが日本全国に広がっていく可能性を秘めているのです。  安冨歩さんの街頭演説での発言は「未来の候補者たち」に大きな影響を与える可能性があるわけで、もっと広く発信して、明日のどこかの選挙で取り入れられるべきだと思うのです。そうやって考えると、残りの数日間でできることがたくさん考えられるのではないでしょうか。
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「子供を守る」という唯一の政策
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