闇に葬られた「オリンパス事件」の真実とは?
2015.01.03
オリンパス事件をはじめとした経済事件の裏側から、政治・マーケット分析まで、独自の視点で執筆してきた闇株新聞氏。経済記者も購読するそのメルマガには日本経済を読み解くヒントが満載だ。果たして、闇株新聞氏は2015年の日本をどのように見ているのか? 緊急寄稿してもらった。
’11年に明るみになったオリンパス事件が一区切りしました。“指南役”とされる人物の裁判が12月8日に判決を迎えたのです。
オリンパス事件とは、’07年3月期から’11年3月期の有価証券報告書に年度ごとの連結純資産を416億円~1178億円も不正に計上した金融商品取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)です。その発端はバブル期に始めた財テクで抱えた損失でした。それをさまざまな方法で隠し続けたオリンパスは最終的に’10年3月期決算で多額ののれん代を計上し、すべての“処理”を終えました。これを月刊誌『FACTA』が取り上げたものの、まったく相手にされず、英紙フィナンシャルタイムズが“不正確”な記事を書いた途端に大騒ぎとなり、当局も事件化せざるを得なくなりました。実はこの記事は社長を解任されたウッドフォードが「タレこんだ」ものだったのです。
一見すると、よくある粉飾決算事件ではありますが、実際には不可解な点が数多くあります。
ウッドフォードは’11年6月に、「不明朗な会計に関して詮索しない」ことを条件に菊川剛会長からCEOの座を譲り受けていました。ところが、約束を反故にして、内部資料をプライスウォーターハウス・クーパーズに持ち込み、その調査報告書をオリンパス経営陣らに送り付け、菊川会長と森久志副社長の取締役辞任を迫ったのです。
その結果、ウッドフォードは内部資料を流出させた“罪”で解任されます。正義感に駆られての行為かもしれませんが、十分解任に足る理由です。ところが、オリンパス側は労働審判を申し立てられると、すぐに和解。氏に12億円もの和解金を支払いました。さらに不可解なのは、解任前日からゴールドマンサックスがオリンパスを大量に空売りしていたこと。損失隠しに関する情報が流れていたはずですが、このへんは一切問題視されていません。
それでは、“指南役”とはどのような存在なのでしょうか?
「もっと早い段階で(指南役が)協力を拒んでいれば、このような事態にはならなかったと残念に思っております」
これはオリンパス事件の裁判における菊川氏の証言ですが、実態は異なります。損失を膨らませたのは、菊川氏以前の経営陣です。オリンパスはバブル崩壊後、簿外損失を隠すために、欧州系の金融機関が好んで扱う「決算対策商品」に飛びついたのです。中でもタチが悪かったのはパリバ証券です。極めて単純なデリバティブ商品だったにもかかわらず、’97年には300億円近い損失を計上させていました。
ならば、なぜ菊川氏は指南役に責任をなすりつけるような証言をしたのでしょうか? それはメインバンクの三井住友銀行や検察、証券取引等監視委員会の意向と考えられます。オリンパス経営陣に全責任があったとなれば、上場廃止は免れません。最悪のケースを阻止するために、指南役をスケープゴートにする筋道が建てられたのです。
ちなみに、この事件には“被害者”がいません。株を手放した投資家は損をしたでしょうが、現在の株価は事件前よりも値上がりしています。むしろ、得した人のほうが多い。なぜなら、欧州系金融機関は決算対策商品で稼ぎ、ゴールドマンサックスは空売りで稼ぎ、ウッドフォードは3か月ほど社長を務めただけで12億円も受け取り、メインバンクも事件後に2000億円以上の融資の回収に成功したからです。
極めて不可解なオリンパス事件の本質を改めて考えてみるべきでしょう。
オリンパス事件の裁判資料をかき集め、関係者と接触し、半ば“連載”のようにオリンパスに関する記事を自身のブログで執筆してきた闇株新聞氏は、最もオリンパス事件の真相迫った人物。12月8日に指南役の責任を問う裁判が判決を迎え、事件が一区切りすることを受けて、現在、氏は『オリンパス事件~闇に葬られた真実~』(仮題)と題した単行本を執筆中だ。なぜ、被害者はなく、オリンパスからお金を巻き上げた輩は罪に問われず、事件発覚当時の経営陣と指南役の責任が問われることになったのか? 裁判と関係者への取材で浮き彫りになった事件の真相は、’15年2月に発売予定の同書で明らかに。
【闇株新聞】
大手証券でトレーディング、私募ファイナンスのアレンジなどを手掛けた某氏が’10年に創刊。オリンパス事件、AIJ投資顧問事件などで、いち早く真相を解き明かして話題に。’12年から有料メルマガ「闇株新聞プレミアム」を開始した
― [闇株新聞]速報 2015年の日本経済はこう動く!【3】 ―
12月8日に判決を迎えたオリンパス事件の真実
スケープゴートにされた“指南役”
闇株新聞氏が「オリンパス事件の裏側」を一冊に!
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