古典的なブラックジャック詐欺は安宿街に泊まる若者が引っかかるケースが多い
外務省により2018年度の海外在留邦人数の統計が発表された。海外在留邦人とは、3ヶ月以上住所を定めて国外に滞在している日本人の数だ。
2018年度版によると、上位5位はこの数年間で大きな変動はなく、1位がアメリカ、2位が中国、3位がオーストラリア、4位タイ、そして5位カナダとなる。オーストラリアは前年比5%増で居住先として人気があり、タイも政情不安が続くわりには3.4%増と順調に在留邦人が増えている。
しかし、タイにおいては昔から邦人の犯罪被害も多いことで有名だ。同じく外務省が発表する「海外邦人援護統計」の2017年度版(こちらは毎年12月に発表されるため、最新は2016年度の件数)では、在タイ日本大使館が邦人援護した件数が実に1048件となる。2位がフィリピン、3位はロサンゼルスの領事館になるのだが、共に800件台。つまり、タイはぶっちぎりに邦人の犯罪被害が多い。
同統計では在外公館別の被害内訳が公開されていないので詳細はわからないが、アジア地域では犯罪被害者が1084人にのぼる。このうち殺害された人は3人のみで、主に多いのは窃盗720人、詐欺153人になる。おそらくバンコクもこのふたつの被害者が多いと考えられる。
タイ国内、特にバンコクでは外国人旅行者に対して詐欺師たちが牙をむいてくる。もちろん、旅行者はそれと気づかずに、身ぐるみを剥がされたのちにやっと自分が被害に遭ったことを知る。
今でもあるのが、ブラックジャック詐欺や在住日本人が「日本円見せてくれ詐欺」と呼ぶ事件だ。ブラックジャックは古典的な詐欺で、街中で親しげに声をかけてきた人に誘われて、彼らの知人をブラックジャックで騙して金を巻き上げようと言われるが、実が自分が騙されているというオチである。これはタイ人に見せかけたフィリピン人であることが多い。
もう一方の日本円を見せてほしいという詐欺は最近またよく見られるようになった手口で、中東系の男が「今度日本に行くからその前に日本円を見せてくれないか」というもの。普通に考えればそんなことをする意味がないのだが、言葉巧みに言われて見せてしまい、いつの間にか抜かれてしまっているというものだ。
これらの詐欺を見るとわかるが、実は詐欺の多くはタイ人が犯人ではないケースが多い。バンコクは国際都市で、外国人が多い。最近でこそ東京など日本の都市部も外国人が増えているが、タイは昔から外国人が珍しくない。しかし、タイ人は詐欺という手の込んだことはあまり好まない。ただ、それは「これまで」の話である。
先の外務省の邦人援護の統計では詐欺被害者も多いが、バンコクの場合、タイ人やその他の国籍者に騙されるケースよりも日本人詐欺師が騙すという案件が多いとされた。この統計はあくまでも実際に大使館の担当官が動いた案件で、相談ベースでの案件はこの何倍にもなる。詐欺は特に立証が難しいので、泣き寝入りしている人も少なくない。特にバンコクは在留邦人増加を見ればわかるように、投資先としても注目されるので、なにも知らない起業家を狙った詐欺も多いのだ。