ALEC WILSON / FLICKR
キューバで5月18日に旅客機が墜落、111人が死亡、2人が現在も重体で治療を受けている。首都ハバナのホセ・マルティー空港を離陸した直後の墜落だった。この飛行機は「グローバル・エアー(Global Air)」というメキシコに本社を構える航空会社の所有で、同航空の機材は以前も異常が多く検出されてチリの領空を飛行することが禁止されたことがあるという。
キューバは、1959年のカストロ兄弟による革命が行われるまで米国の影響下の強い国で、航空業界も当時米国に存在していたCurtissやPamAmなどがシェアを占めていた。ところが、1961年に米国がキューバと国交断絶し、更に米国からの制裁なども加えられてからキューバの航空業界は一挙に後退した。
現在のキューバの航空事情は最悪で、キューバ国営航空(Cubana de Aviación)が所有している機材の多くが部品の不足で飛行出来ないという事情を抱えている。その影響で市民も搭乗できるのかどうか、その日になってみないと分からないという時も往々にしてあるという。
そこで、キューバ国営航空はその解決策として国内での飛行に世界のレンタル航空会社からパイロット、乗務員、整備士付きの機材を借りて問題を解消するようにしている。
しかし、契約するレンタル航空会社にも質のレベルにおいて差がある。
キューバ国営航空は、グローバル・エアーから機材に加え、パイロット2人、乗務員3人と整備士とをセットでレンタル契約していたという。
ところが、その機材に問題があった。今回の事故機ボーイング737-200はメキシコのグローバル・エアー(Global Air)別名をアエロリネアス・ダモジ(Aerolineas Damojh)という会社が所有している機材で、なんと1979年に生産されたという39年使用されていた年代物であった。グローバル・エアーが手にするまでにPiedmont Airlines⇒USAir⇒US Airways⇒Royal Airlines⇒USNavy⇒Canada3000Airlines⇒National Airways Cameroon⇒Avolar⇒Benin Golf Air⇒Aero Caribbean……と、10社近くの航空会社を渡り歩いた後にグローバル・エアーの所有となったもので、お払い箱になっても不思議ではない機材であったのだ。(参照:「
El Periodico」)
グローバル・エアーは1990年に創設され、経営者はマヌエル・ロドリゲス・カンポというスペイン人だという。ホームページは開設しておらず、2011年10月のフェイスブックには”115人から130人乗りの飛行機を9機揃えている”と掲載されていたが、今回の事故を切っ掛けにメキシコ政府管轄局が明らかにした情報によると、現在所有しているのはボーイングB737-300を2機と今回事故を起こしたB737-200の1機だけだったということだ。(参照:「
BBC」)
事故機は2017年11月21~24日に定期検査を受けたと報告されているが、2005年から2013年までグローバル・エアーのパイロットとして勤務していたマルコ・アウレリオ・エルナンデスが、2013年10月に同航空を告発していたことがメキシコ紙『
MILENIO』で明かにされた。
同紙によれば、機材の整備が怠っているというのが告発の理由だとされている。それが原因で彼は飛行中にエンジン不良や電気系統の不良などを経験して飛行途中に引き返さねばらなかったこともあるという。
チリに飛んだ時も、彼が操縦していた機材に色々と異常が見つかり、この「おんぼろ」機材はチリの領空を飛行しないようにとチリ航空検査官から一度厳しく忠告されたことがあるそうだ。
今回の事故で亡くなったパイロットのホルヘ・ルイス・ヌニェスともエルナンデスは2か月一緒に機上した経験があるそうだ。「彼は優秀なパイロットで、どうして今回の事故が発生したのか分からない」と同氏は語っているという。